ただのドライブだと思っていたら家族総出で実家にご挨拶とか心臓に悪い

8/8
前へ
/77ページ
次へ
「ちょっとルミさん、落ち着いて」  お母さんが、眉をしかめて注意する。 「え? お母さん、ルミさんと知り合いなの?」 「ええ、ルミさんが現役の頃、お店を会社の接待でよく使わせて貰ったし。まさか、こんな縁ができるとは思っていなかったけれど」  ずっと大手の食品会社でバリキャリを通して来たお母さんは、浮気したお父さんに離婚届突きつけて、ずっとシングルマザーとして、私を育ててきて。  ずっと手助けしてくれていた佳也子おばさんがキューピッドになってお義父さんと再婚した時も、仕事は辞めない! って宣言して。  そんな、どっちかと言うと気の強いウーマンリブなお母さんが、天然ほわほわお嬢様系のルミさんと繋がっていたことに、結構びっくりした。  それはともかく。 「お母さん、結納って、どういうこと?」 「だって、私、しばらく忙しいし。せっかく家族揃って来てくれるって言うなら、ついでに一遍に済ませちゃった方がいいかな、って。あ、舞子は結納しない派だった? 大丈夫、略式だから座っているだけでいいわよ」  ……ついでにって、お母さん……。 「まあ、いいじゃない。どうせ結婚するんでしょ? 約束事ってことで」 「……あの」  尊流、青ざめながらも、はっきりした口調で、申し出る。 「結納の前に、まずはご挨拶、させて貰えますか?」 「どうぞ?」 「はい。……お嬢さんを、僕に下さい!」  
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加