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「ちょっとルミさん、落ち着いて」
お母さんが、眉をしかめて注意する。
「え? お母さん、ルミさんと知り合いなの?」
「ええ、ルミさんが現役の頃、お店を会社の接待でよく使わせて貰ったし。まさか、こんな縁ができるとは思っていなかったけれど」
ずっと大手の食品会社でバリキャリを通して来たお母さんは、浮気したお父さんに離婚届突きつけて、ずっとシングルマザーとして、私を育ててきて。
ずっと手助けしてくれていた佳也子おばさんがキューピッドになってお義父さんと再婚した時も、仕事は辞めない! って宣言して。
そんな、どっちかと言うと気の強いウーマンリブなお母さんが、天然ほわほわお嬢様系のルミさんと繋がっていたことに、結構びっくりした。
それはともかく。
「お母さん、結納って、どういうこと?」
「だって、私、しばらく忙しいし。せっかく家族揃って来てくれるって言うなら、ついでに一遍に済ませちゃった方がいいかな、って。あ、舞子は結納しない派だった? 大丈夫、略式だから座っているだけでいいわよ」
……ついでにって、お母さん……。
「まあ、いいじゃない。どうせ結婚するんでしょ? 約束事ってことで」
「……あの」
尊流、青ざめながらも、はっきりした口調で、申し出る。
「結納の前に、まずはご挨拶、させて貰えますか?」
「どうぞ?」
「はい。……お嬢さんを、僕に下さい!」
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