花ひらく

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「おい、聞いたか? いよいよ明日だってよ」 「まじか! あんなの、夢物語でありえないって、皆んな言ってるけどよ」  ここは常闇の国、この国の国民は、空の隙間からわずかに差し込むおぼろげな光の中で細々と生活していた。  しかし、この国には伝説があったのだ。 ―― 時がたてば、やがて天は開かれ、余す事のない光が注ぎ込まれるであろう。しかしそれは、天から来る大いなる災厄の始まりでもある ―― ☆ ☆ ☆  そして、その時はやって来た。人々が見上げていると、天は徐々に開かれ大いなる光が注ぎ込んできたのだ。 「うわー、助けてくれー」 「逃げろー、みんな逃げろー」  しかし、それと同時に多くの魔物たちが天より飛来し、仲間たちを一人また一人と連れ去って行ったのだ。  この国の中心には、古来より言い伝えられているように、甘い蜜なるものが生まれる泉があった。開かれた空からは、毎日のように巨大な魔物がその蜜を求めて訪れる。  魔物たちが蜜を吸い上げに来ると、この国の人々は魔物が持つ悪魔の力で吸い寄せられ蜜と一緒に連れ去られていくのだった。  ◇ ◇ ◇ 「みなさん、ルーペを近づけてよーくお花を見てくださいね」 「はーい、先生」  お花畑は、綺麗な花々が咲き乱れていた。先生と子供たちは、咲いている花を見つけては、ルーペを使って花びらの中を覗き込んでいた。 「へー、花びらの中には小さな花粉がびっしりと入っているんだね」 「うん、そうだね。花びらが開くまで暗い花びらのなかでじっとまっていたのかな?」  子供たちは、花びらの中を覗き込んでは、そっと指をいれて指先に付く花粉を珍しそうに眺めていた。  と、そこへ。 「うわー、あぶないよ。はちみつが飛んできたぞー」 「急いで逃げちゃアだめだよ。彼らも蜜を取りに来ただけだから、刺激さえしなければ大丈夫だからね。ミツバチからそっと離れなさい」  花の蜜を取りに飛んで来るミツバチを見つけて騒いでいる子供たちに、先生は、やさしく語り掛けるのでした 了
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