涙色のハンカチ

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 世の中は不平等だ。  生まれた時からお金持ちだったり、生まれた時から貧乏だったりとステータスに大きな差が存在しているのだ。  大人は子供に、というが、それが虚言であることを俺は知っていた。  何故なら、俺は生まれた時から貧乏なのだ。小さい頃から、世の中の人が平等ではないことなど理解していた。  何故、幼稚園の友達は旅行に行くのに自分の家族は旅行に行かないのか。  何故、小学校の友達は最新のゲーム機を持っているのに僕は持っていないのだろうか。  何故、中学の友達は携帯を持っているのに俺はもっていないのだろうか。けれど、中学二年になった俺はそれらの答えを知っていた。  俺の家族…つまり古川家(ふるかわけ)は貧乏な上に借金がある。  両親は共働きで俺は家に独りでいることが多かった。それでも、お金は足りてなどいなかった。  出てくる晩御飯は、白米とソーセージと特売の卵を使った卵焼き。それだけだ。  時々、卵焼きが目玉焼きに変わるが基本的にはいつも同じような晩御飯。  今日もキッチンからソーセージを焼く音が聞こえてくる。 「優一(ゆういち)、ごめんね。今日もまた同じ物で」  母さんの申し訳なさそうな声が俺の耳に入ってくる。  俺は、母さんのそんな弱々しい声が大嫌いだった。でも、誤解しないでほしい、俺は父さんも母さんも大好きだ。俺の大切な自慢の家族だ。 「気にしないでよ。俺は元々味とか分かる方じゃないし、食えりゃ何でもいんだよ」 「うん、ありがとうね。あんたがほんっとに良い子でよかった…」  母さんは目を潤わせて、そんな言葉を吐き捨てた。少しむず痒くて、思わず口元が緩み照れてしまいそうになる。  ピーンポーン。ピーンポーン。  家のインターホンのベルが鳴り出し、母さんはすぐに火を止め、焼き上がってはいないであろうソーセージを皿に上げた。  そして、両手を合わせ俺に視線を向ける。  俺は頷き、インターホンに接続されている受話器を手に取った。 「はい…」  そう呟くと、俺が子供だということに気が付き『お母さんかお父さんはいる?』と男性の低く優しい声で尋ねられた。 「今は居ません」 『どっちもいないの?』  居ないと言っているのに信じてはもらえていないようで、中々にしつこい。 「すいません、今は自分一人なんです」 『あーそうなのか。ごめんね。じゃあ、父さんとお母さんにが来たよって伝えておいてもらっても良いかな?』  優しい口調で堅苦しさもなく、子供に話しかけるよう伝えられた。 「分かりました」 『じゃあ、よろしくね』  俺が返事をすると呆気なく話は終わり、男性は帰っていった。  俺は溜め息を漏らした。 「母さん、終わっ…」 「しっ!」  母さん終わったよ。そう伝えたかったのに、俺は母さんのてによって口を塞がれていた。  そして、数分が経った頃、母さんは忍び足で玄関までいきドアに耳当て、数秒してから俺の方へと戻ってきた。 「優一、話が終わってもまだいるかもしれないからすぐに話し出したら駄目だよ」  何故か注意をされた。 「分かった、ごめん」 「ううん。ごめんはお母さんの方だよ。ごめんね、優一」  母さんの言葉に俺は返す言葉を失っていた。そして、沈黙の末母さんが焼きかけのソーセージを焼き始め晩御飯の準備が進められた。
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