涙色のハンカチ

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 中学校二年生にもなり、慣れ親しんだ校内の昼休みの教室内。  窓際の前列に複数で溜まり混み、談笑をしていた。最新ゲームの話や携帯を使って昨晩に話していたことの続きなど、話題は様々だった。  様々だけれど、俺はその様々な話題の一つにも触れられることはなかった。  ゲームは知らないし、携帯も持ってないから昨晩の話とやらにも加わることができやしない。  つまらなさを隠すこともなく校庭を眺めて黙っていると、近くにいた男子クラスメイトに話しかけられる。 「優一はゲームとかしねーの?」  その質問に答えようと口を開けようとした時…。 「優一は、ゲームとか興味ないんだよ。な?」  また別のクラスメイトが俺を知ったような口で答えた。挙げ句の果てには俺本人に同意を求めてきた。  ゲームに興味の無い男子なんているはずがなかろう。俺を知った気になっているだけで、俺のことは何一つとして分かってやしない。  けれど、俺は二人を軽くあしらうように頷いた。 「うん、興味ねーし。時間が勿体ねーだろ」 「だよな、優一らしいわ」  俺らしいとは、どういうことだろうか。  嘘を付いて偽物のキャラを演じきる俺が俺らしさなのだろうか。それをとは言わない。  会話がほぼほぼ、強制的に終了したタイミングで今度は別のクラスメイトが話しかけてきた。勿論、男子だ。 「ゲームはいいとして、携帯は買ってもらった方がいいんじゃね?」  今度は回答権をとられないよう、俺は素早く答えた。 「携帯もあってもなくても変わんないだろうし、あんま見ないと思うからいらないな」 「へー」  本当は欲しいけど買ってもらえないから強がってんだろ?と言わんばかりの表情で見られていることは分かっている。  でも、当たらずしも遠からずなので反応することはしなかった。どう思われていようが、何でも良かった。  授業が終わり、部活動もない今日は特にすることもなく真っ直ぐ帰宅することにした。  同じ部活に所属している男子五名との合同下校になる。  俺らは部活のことやら、いよいよ間近になってきた学園祭のことやらを話ながら帰路を歩いていた。すると、一人の男子が「そういえば」と、声を漏らし話を続けた。 「今週の日曜日遊園地これる奴いる?隣のクラスの女子とかと行くんだけど、男子も数人誘っておいてって言われててさ」  そのお誘いに俺以外の四人は「いいよ」と反応していた。その為、視線は俺に集まるのだが、彼らは声を漏らす。 「優一は行かないもんな」 「まあね」 「だよな!あはは」  皆は笑って誤魔化してくれるとても優しい奴等だ。本当はここにいる皆と思い切り遊んでみたいといつも思っている。  でも、ようやく作り上げられたお金を使わなくて済むキャラを捨てることが俺はできない。だから、いつでも本音は腹の中にとどめておくのだ。
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