涙色のハンカチ

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 すっかり日が傾いた頃。俺は気まずさはあれど帰宅した。  そして、居間で腰を下ろしテレビを見ている二人は「おかえり」と何もなかったかのように言葉をくれた。  ここで実感した。僕らは家族なのだからどれだけ喧嘩をしようとも、この家族という糸が切れることはない。  俺は二人の視線がぶつかるテレビの前に正座をした。  すると、父さんが「なんだ?」と声を漏らす。特に怒っている様子はなかった。 「ご、ごめん。俺、二人に酷いこと言った。本心じゃないんだよ。でも今まで沢山我慢してきて、なんで俺だけって思うとなんか、こう感情がコントロール出来なくって…」 「分かってるよ」  母さんが声と涙を漏らした…。  父さんは表情を変えないままに口を開く。 「ごめんな、優一。お前が我慢のできる子だからってそこにすがってた。内は貧乏だから金銭面で言いづらいところはあると思う。実際にお前にやれる程の額は持ち合わせてない。でも、もっとわがままでいいんだ。悪いのはお前じゃないんだ」 「でも、俺は…」  俺が話そうとするのを母さんが遮った。 「打ち上げの時くらい素直に言いなさい。そのくらいなんとかする。でも、ごめんね、五千円までしか出せないの。さっきもそう言おうとしたんだけど…余程我慢させてたんだよね…ごめん」  母さんと父さんは微かに笑みを浮かべた。 (なんだ、俺の早とちりか。でも…) 「二人とも、これからはさ」  俺が今、口にしたことはお兄さんにがくれた後ろめたさを下記消す方法だった。  何故か溢れる俺の涙は母さんにも伝染していって、やがて父さんまでもうっすらと雫をこぼしていた。  何か、涙を拭くものは無いかとポケットに手を入れて気がついたハンカチの存在。  僕はお兄さんからもらってばかりだ。
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