第1章 女上司はタラコ唇~~💖

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女上司、即興モデルとなる ≪この後、明日の下打ち合わせしたいの。時間、大丈夫?≫ ≪はい、大丈夫です。二人だけでですか?≫ ≪ええ。ここが終わったら、スズラン南通りの”モームーン”で落ち合いましょう≫ ≪了解です。僕は国道に出て、遠回りして向かいます≫ ≪うん。じゃあ、後程ね…≫ そしてこの1時間半後、アキとトシヤは二人だけのミーティングだか二次会だかの場を持ったのだが…。 *** 「私はキールを頼むわ。風間君も好きなのどうぞ」 「じゃあ、カシスソーダにします」 風間トシヤとは中原アキは、雑居ビル4階にあるカフェバー”モームーン”という、割かし明るい雰囲気の店で一番奥の丸テーブルに向き合っている。 二人は、まずは”一杯目”のオーダーを決め、その後グラスを交わした。 「…まずは改めてお礼を言わせて。今日はあなたに助けられた。本当に感謝してる。ありがとう…」 「いえ。課長が宴席の場を設けてくれたんで。さすがに社内でのミーティングじゃあ、あそこまでの発言は無理でしたから…」 「それでも、あなたがレジェンヌの初期マーケの具体案を用意できていたからこそ、二課を持って行けたのよ。こうなったら、何としても明日、みんなを畳んじゃいたい。だから、あなたのプラン、大体は今夜のうちに把握しておきたいの」 「わかりました。僕もこうとなったら、試供品段階のレジェンヌを初期マーケティングで成功させたいし…」 「うん…。じゃあ、まずは風間案のアウトラインを聞かせて」 二人だけの二次会はコテコテのミーティングから始まった。 *** 「ざっくり言えば、試供品のモニターを使って全国キャンペーンってことになります。ですが、肝は本社が仕切る一本発信ではなく、6つの支社それぞれが支社HPをメイン媒体にして各当地のモニターを募集・採用し、各支社の地域性を加味した独自色を押し出した上での”連動”一斉キャンペーンって切り口です」 「…じゃあ、まずは本社で一本化して各支社へは一律起動させるんじゃなく、極端な話、モニターの公募から活動まで各支社単位での個別起動ね?」 「はい!そこで、このマーケティングキャンペーンの最大ポイントはキャッチ&ビジュアルに据えています。…これは全支社統一で支社単位からスライド発信させる訳ですが…」 「用意できてるのね?キャッチなり発信するビジュアルイメージは…」 「もちろんです。レジェンヌのキャッチコピーは今、そっちのラインに流します」 数十秒後…。 トシヤの目の前で、アキはラインで届いたそのキャッチをスマホで確認すると、思わず唸った…。 *** 「うーん…、これは…⁉」 ≪”厚手”のあなたにステキを塗る…!≫ 「ちょっと、説明が必要ですよね。なら、中原課長、…ここでレジェンヌを唇に塗ってくれますか?”ある瞬間”をスマホで撮って、それでビジュアル面と一緒に補足しますので…」 「わかったわ…」 「一応、下唇を塗り終わったところのショットになりますので…」 アキはバッグからレジェンヌの試供品スティックを取り出し、唇に当てた。 そしてアキが手鏡に映し、下唇の最終塗りが終わる直前、スマホ片手にトシヤはこうオーダーした。 「…はい、ここで一旦ストップです!ええと…、まずリップをつまんでる右手、もう少し上に立ててくれますか。…はい、そうです。で…、リップの先端が下唇の右端に、ほぼくっつくくらいまで近づけてください」 「こうかしら…?」 アキは即興のカメラマンに化けた部下の注文に従って、指示通りのポーズをとった。 「はい!ここで撮ります。近くまで寄りますからね」 女上司アキも即興のモデルと化し、無言で小さく頷いた。 ”カシャ…!” ”撮影”は無事終了した…。 ”何とエロいんだ!たまらん…” ”カシャ”音後、10秒…、すでに風間トシヤは、”カメラマン”からむっちりボディーの女上司にムラムラ気味の下心と格闘する市井のオトコに変じていた。
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