第7章~ミノアカ~

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第7章~ミノアカ~

帰りの車の中、カイも私も、口を閉ざしたままだった。 カイは真っ直ぐ前を向き、私は窓の方を向いたまま... 「コナ、ごめん」 「.....」 「パパは、病気の苦しみと辛さで、いつもと違うんだ。ママの話では、会うのを楽しみにしてくれてたって、言うんだけど...」 「.....」 「あの後、パパ、冷静になって話をしてくれたんだよ。本当にコナミの事を思ってるなら、今やるべき事すべき事を考えろ、本当にコナミさんと一緒になるなら彼女にハワイの事をもっとわかってもらいなさい、俺はもう先が長くないのは、わかっている、レフアとフラブラザーのケオにお前の事を任せてあるって、言われた」 「ねぇ、カイ、私が来た意味は、あったの?」 「もちろん、あったさ。逆に、巻き込んでしまって悪かった」 「私、カイが好きよ、でもハワイに住むかって考えたとき、答えが出なかったし」 「わかってる、今すぐじゃないんだよ、その問題は。まず、俺なんだよ、しっかりしなきゃならないのは。コナは、俺の事を信じていてくれればいいんだ。」 コクンと、私は頷いた。 カイの右手が、私の左頬をそっと包んだ... 「ただいま」 「おかえりー、お兄ちゃん、コナ!」 プアがリビングでコーヒーを飲んでいた。 「コナも飲む?お兄ちゃんは?お昼食べてないんでしょ?サンドイッチあるよ」 「俺はいらない、部屋で用事を済ませるから」 と、上にあがって行った。 「プア、私、コーヒー飲みたい、アイスコーヒーが、いいんだけど」 「オッケー!」 氷のカランカランという音が、心地よかった。 リビングの向こうの庭の、そのまた向こうに、ブルーとオレンジ色の空とその色が、海に映っている。 それは、風景画のように、揺れるカーテンの隙間から見えた。 「コナ、サンセット見に行こうか?」 「うん!」 プールサイドから浜辺に行ける階段を、降りていった。 さっきと違って、オレンジとピンクみたいな色の後に、紫に変わってきた空。 日本では見たことのない空の色。 (なんて綺麗なんだろう) 「毎日空の色変わるよ」 「ホントに綺麗!」 しばらく眺めていた。 (そうだ!プアに聞かなきゃ) 「今日、散歩の帰り道に、すごく綺麗なモデルみたいな人がカイと話してたの、マヘ何とかって呼んでたけど」 「マヘアラニね?」 「そー!そー!」 「彼女は、お兄ちゃんのクラスメイトだった人で、うちのハーラウのハウマーナ(生徒)でも、あるのよ」 「そうなんだ、なんかさ、凄い勢いで喋ってて、怖かった」 「あぁ、たぶん、ノヘアのことで怒ってたんじゃないかな?」 (ノヘア?どっかで聞いたような....) 「ノヘアって、誰なの?」 「レフアのアシスタントしてて、まぁ~、パパのアラカイ(弟子)って言ってもいいぐらいの人、お兄ちゃんの元彼女よ。」 (そうだ!パパが話してたときに聞いたんだ!) 「ノヘアは大丈夫だよ、もう彼氏いるから」 笑いながらプアが言った。 「お兄ちゃんにはコナがいるしね」 「あぁ、うん、そうね...」 (大丈夫なのかな...) 「見て!そろそろサンセットタイムの 始まりよ!」 「うわぁぁ!」 地平線に、太陽が溶けていくようだった、生まれて初めて見た風景だった。 (今日は色んな事がありすぎたな...でも、くよくよしないのが、私のモットー!よし!) 「明日は明日の風が吹くぅーーー!!!負けるもんかぁーーーー!!!」 大声選手権なら、絶対優勝するぐらいの大きな声で、海に向かって叫んだ。 「ひゃっ!」 プアが、ビックリして飛び上がった。 2人で顔を見合わせて、大笑いした。 「プア、笑うことっていいよね!」 「そうだね、笑うとハッピーになれるし、 元気がでるもんね」 「今日はさ、沢山泣いちゃったんだ、あたし」 「そっか...」 プアは、訳を聞かず、海を見ながら返事をした。 「コナ、沢山泣いたらその分笑うのよ、無理してでも笑うのよ、【ミノアカ マイ!】」 「あ!ミノアカって、【笑顔】って意味でしょ?知ってる!」 なんだかわからないけど、箸が転がっても 可笑しい年頃ではないのに、笑いが止まらない。 (きっと、沢山泣いたから、その分笑いなさいって、ハワイが教えてくれてるんだ) 「コナ、暗くなってきたから、家に戻ろうか」 「そうだね、あっ!そうだっ!プア、レイの作り方教えてー」 「オッケー!ちょうどいいわ、明日ワイキキのクヒオビーチトーチショーで、パパのハーラウが出演するのよ」 (カイが、明日ワイキキに行こうって言ってたのは、この事か) 「でね、そこでみんなが着けるレイを 私が作るのよ、だからコナ手伝って!」 「え?無理だよー!」 「花を摘んだり、花の大きさを分けたりする だけの作業よ」 (花は買わないんだー、さすがハワイ!) 「ちゃんと教えるからさ」 「うん!頑張るー!花取りー!」 (ここに居るうちに、少しでもハワイのこと知っておかなきゃ、カイのために、カイのパパのために、自分のために) 「じゃ、明日早起きよー!」 「大丈夫よ、明日はカイと早朝デートだから」 「はいはーい、仲がいいですねー、お2人さん!」 「アハハハハ」 また2人で大笑いした。 (【ミノアカ マイ】素敵な言葉だなぁ) 「さっ、戻ろう!ママの美味しいディナーが 出来上がってる頃よ」 「おっけー! レッツゴー!」 辺りは暗くなり、空には沢山の星が、瞬いていた。
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