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「時間だ」
そう言って貴方は柔らかく微笑った。
ゆっくりとほどかれた温もりに私は慌てて顔を上げた。
「……また、逢えますか?」
ようやく絞り出した音は震え、視界は滲んで薄紅色に揺らめいた。
「ああ、俺はずっと此処にいる」
お願い。いかないで。
まだ大事なことを伝えられていない。
私は思わず手を伸ばした。
「また花ひらくこの季節に」
僅かに触れた指先で桜の花びらが舞い散った。
彼の儚く美しい笑みだけが私の脳裏に焼きついた。
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