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開く蕾 ③
「夫婦じゃなくて娘。放してね」
こういう状態で騒ぐと、余計に嗜虐性や性欲に火をつける、と聞いたことがある。
こみあげてくる嫌悪感を抑えて、わたしは冷静に、美沙の父親を諭そうとした。
けれども、それは全く聞こえなかったようだ。
美沙の父は、声をあげて泣き出した。
「カズミぃ…… ナニもかも、許してやるからぁ…… 帰ってこいよぉ……」
泣きながら、顔といわず胸といわずキスをし、陰茎を腹に擦りつけてくる。
気持ち悪い。こんなヤツ、大嫌いだ。
ハッキリとそう自覚した瞬間、わたしの目の前に火花が散った。
わたしを覆っていた蕾が、音を立てて開く。
世界が、一気に、変わる。
―― 気づけばわたしは、美沙の父親の頭を、シャワーヘッドで思い切り殴りつけていた。
頭が割れ、血が吹き出る。
それでも、殴る手は、止まらない。
やがて、ぶよぶよした身体は、ぐったりと湯の中に崩れ落ちた。
わたしは風呂から上がり、身体を拭き、化粧水を肌につけ、髪を乾かしてパジャマに着替え、ベッドに入って、眠った。
―― その夜わたしが見た夢は、色鮮やかで、音と光に溢れていた。
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