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白い蕾 ②
美沙と仲良くなったのは、ごく最近のことだ。大学入試の合格発表でたまたま会ったのがきっかけで、美沙はわたしに話しかけてくるようになった。
高校生でも薄くメイクをしていて、人懐こく何でもハッキリと言う美沙のことは嫌いではなかったが、わたしと美沙は違いすぎた。
わたしは、感情が平坦で感受性も乏しく、物事にいちいち何かを感じたりしない方だし、ファッションにもメイクにも興味が無かった。
18歳になったからといって、わたしの世界は全く変わらない。18歳、それが何だというのだろう。
けれども、美沙の見る世界はたぶん、わたしとは違う。
わたしは美沙を取り巻く、堪えきれないほどの賑やかな音と色とりどりの光に満ちた世界を想像してみようとした。
―― 18歳になったことが感慨深かったりする世界。少しでも美しく見せようと努力することが、嬉しいような世界。
昨日と今日が、今日と明日が全く違って見えたりする世界。
昨日も今日も明日も、全く変わらない白い蕾の中のわたしには、想像もつかない世界だ。
その世界の向こうから、美沙の声は軽々と境界を飛び越えてきた。
「ね、ちょっとだけ。魂、交換してみない?」
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