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咄嗟に手を伸ばしその場所を隠した、足も閉じようとしたが叶うわけもない。
「空羅」
愛おしそうに声を上げるが、その意味が紗栄子にはわからない。そして抵抗の甲斐もなく、男はいとも簡単に紗栄子の中に入ってきた。
「いやあ!」
痛みと悲しみが込み上げる。既に情事は終えた後だろうが、記憶があるのとないのとでは大違いだ。
紗栄子は、今、見ず知らずの男に犯されていた。
*
薄暗い寝室に、男は戻ってきた。
ベッドに仰向けに横たわり泣いている紗栄子を見て吹き出す。
「演技、うますぎだろ」
言葉に紗栄子は横目で睨みつけた、その迫力に男は肩を竦める。
「ごめん、ごめん、さすがに痛かったか?」
言うと持ってきたミネラルウォーターのペットボトルを紗栄子の左の頬に押し当てた。冷たさが心地よく痛みを癒す。
「──サイコパス」
ペットボトルを受け取りながら紗栄子は呟く。
「は? なんだって?」
男は笑顔だが怒った声で聞き返す。
「人にひどいことしておいて、ごめんごめんって」
やめてというのに、男は笑いながら行為を続けた。気持ちいいだろと言い、今日は機嫌悪いなと言って首や乳房や敏感な場所に歯と爪を立てた。
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