【目を開けるとそこには】

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可愛い子だった。大きな丸い目が印象的だった、すっと伸びた鼻も綺麗で、人形のような顔立ちだ、自分が知る顔とは全く違う。頬を撫でると画面の少女も同じ動きをした、ならば今見えているのが自分自身なのだと判る。 なにより頭髪が──それに触れた。ストレートのボブカットだったものが、腰まであり緩やかなパーマもかかっているようだ、もっとも今は乱れすぎていて手櫛も通らない。ひっかかって痛みを覚えるのだから、間違いなく自分の髪だと判る。よくできたカツラなのかと改めて掴み引っ張ったが、頭皮ごと引っ張られた。 年齢も。紗栄子は30歳なのに、画面の少女は10代後半ではないだろうか。 「──え……誰?」 紗栄子の言葉に男は心底心配そうに溜息を吐く。 「高倉空羅(そら)、23歳──って、大丈夫か? やっぱ激しすぎた?」 「……23……そんなはずない、そんなはず、ないよ……!」 10代後半に見えたのに、ではない、親に結婚はまだか、孫の顔くらい見せろと言われていた女だったのに。 「空羅」 男は傍らに座り、紗栄子を抱き締めた。先ほどの乱暴な仕草とは違い、優しく背中を撫でられ、紗栄子は素直にその胸に顔を埋めていた。
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