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「や、ちょ……待って、空羅ちゃん!」
激しい抵抗もできず引き倒された、空羅は馬乗りになり紗栄子の顔を両手で包み込む。
「やだ、やだよ……あなた誰、空羅の体返して! こんなの嫌、それは空羅の体なの! 真治くんが愛してくれた、空羅の体!」
指が、爪が肌に食い込んだ、しかしその痛みを紗栄子は感じなかった。
「落ち着いて! 私も返せるものなら返したいの! その方法を探るためにも、真治くんも交えて話をしよ!?」
空羅の手首をつかみ離そうとするが、空羅の意外なまでの力の強さに驚いた。
「方法……っ、そうだ、もう一回死んだら……っ」
空羅の手が首に移動した、待って、と声をかける前に小さな手が思い切り首を締めあげる。
「……く、は……っ」
助けを呼ぶ声すら出ない、体をよじり逃げれば一度は空羅の体と手から逃れたが、空羅はすぐに体勢立て直して再度首を絞める。
(……この子、本気で……!)
もう駄目かもしれない、そう諦めかけた時、
「空羅!」
真治の声がして紗栄子はほっとした、空羅の手もすぐさま緩み、体の上からも退く。
「真治くん!」
空羅は駆け寄り、バスローブの紐も乱暴に締めた真治に抱き着いた。
真治は湯舟に浸かっているときに来客の気配に気づいていた、なにやら話し込んでいるとは思ったが、怒鳴り声に慌てて出てきてみれば、である。
「空羅……なんで、お前がこんなとこに……!」
まだ小学生が来られる距離ではないだろうに。
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