【異国の空の下で】

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【異国の空の下で】

オランダ行きは3か月遅れになった。 幸い別の者に変更されることもなく、怪我の完治はまだだがオランダで引き続き治療を受けさせてまでくれることになる。 異国に移り住み半年、その暮らしを楽しめるようになってきた。 休日の昼下がり、紗栄子はスーパーで見つけたサツマイモを湿らせたキッチンペーパーとアルミホイルに包み、ガスオーブンに入れた。低温でじっくり1時間焼き焼き芋にしようと言うのだ。 オランダの食事も美味しいが、やはり日本人だ、日本食は恋しい。しかも焼き芋のような庶民の味は、なかなかレストランでというわけにもいかない。サツマイモを見た瞬間、食べたいと思ってしまった。 オーブンの中、照明に照らされたふたつのアルミホイルを見て、紗栄子はウキウキしてしまう。 来てすぐにに結婚式を挙げた。紗栄子が招待した者は当然いないが、真治が呼んだのも家族と会社の者を数人だけである。とてもこじんまりとした式となった。披露宴すらないことに秋実はちょっとお怒りモードだ、お色直しをいっぱいしたいと言っていたのを忘れていなかった。毎月衣装を変えて結婚式を挙げましょうと提案したが、皆にブーイングを受け却下されていた。
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