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『今どこ、周り静かだね! え、今日も残業!?』
「はい」
なるべく明るい声で返事をした、余計な心配はかけたくなかった。
『ごめんねえ、私の所為で!』
先輩の市村留美はバイク乗りだ。恋人とツーリングに出た先で転び、見事に右大腿部を骨折してしまった。全治2か月と言われてしまっている。
『彼氏さんに申し訳ない!』
「いないこと知ってて、そういうこと言います?」
嫌味ったらしく言うと、市村はえへへ、と嬉しそうに返事をする。少なくともクリスマスも年末年始も入院となってしまった自分と同じように籠の鳥のように身動きできない者がいることは、ちょっと嬉しかったりする。
『でもホントに、ごめん。もう歳末だってのに残業だ』
「うーん、自業自得でもあるんで」
派遣を断った件だ。
「そんなこと気にしなくていいですから、しっかり治して復帰してくださいよ!」
『うん、うん、再来週には退院って言われてるから! それまで頑張って~!』
「え、全治二か月じゃないんですか?」
『それは骨に入れた金属が取るまでの時間も入ってるわ、退院はできるって!」
「よかったあ」
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