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「えーっと。サエコさん?」
バスローブを羽織った真治は、ペットボトルの紅茶をグラスに注ぎながら言う。
バスルームでも、洗ってやると言って散々全身を撫でまわされた。確かに泡はついていたから洗っているのは間違いないかもしれないが、なにか違うと思ったのは同じところばかり撫でられたからだろうか。
そして泡がついた体を擦りあわされ、さらに届かないところは洗ってくれと言われ、紗栄子は渋々真治の背中を手の平についた泡で洗ってやったが、そうじゃない体でと言われ、拒否をすれば甘い口づけをされ、拒絶すれば気持ちが良いところを責められ、嫌がればじゃあ洗ってとせがまれ、紗栄子はぶつぶつ文句を言いながらも真治の背中に胸や腹を擦りつけて洗ってやった。
そしてふたり揃って風呂から出たが、紗栄子には髪を乾かしておけと言い残し真治は先に風呂場を後にしていた。
紗栄子もバスローブを着てキッチンへ行くと、既にダイニングテーブルには食事が用意されていた。真治はあるもんで悪いなと苦笑いする、確かにあるのは食パンとインスタントのスープだけだったが十分だと思えた。
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