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「まあ、少しは理解できたわ。確かに今の空羅は、俺が知ってる空羅とは違う」
真治の言葉に、紗栄子たる空羅はうんうん、と頷く。
「セックスも痛みで快感感じるタイプだったし」
「私は違う!」
「うんうん、悪かったよ」
脱衣所で見た表情を思い出すだけで体が熱くなってしまう、そんな表情を見たこともなかったと思いしらされる。
「そうやって言い返したり、自分の意見も言うタイプでもなかったしな」
「──そうなんだ」
真治の言葉に、空羅という少女がもっていた影を感じた。こんなにも可愛らしい顔をしているのに、自分の意見すら発言しないとは──。
「まあ、家庭の事情が、いろいろな。その手首見ても判るだろ」
真治は紗栄子の左手首を指さした、幾重にも連なる赤い筋を。
「──うん」
そこを傷つけたくなる衝動はいくつかあるだろう。本当に死にたい願望がある時もあれば、単に痛みを覚えたい場合も──。
「──可哀そうに」
思わずその傷を撫でていた、それを見た真治が紗栄子の──空羅の髪を撫でる。
「ん?」
「本当に、演技じゃないんだな」
「そう言ってるじゃんっ」
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