【目を開けるとそこには】

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まるで下着屋の引き出しだ。もっとも自分はこの手のものを買おうとも思ったことはない、シャツに透けない、響かないが購入の第一条件だ。 なんとか色とレースがおとなしそうなものを選んだ。それに真治のTシャツを合わせるが、縁取りにあるレースがこれでもかと主張する。 ただでさえ真冬に半袖だ、真治は、ん、と言って長袖のワイシャツを差し出した。紗栄子は礼を言って羽織るが、どちらもショート丈ながらワンピースのようになってしまう。袖口も何重にも捲り上げる。 そしてバミューダパンツは、これまた半端な長さのボトムスになってしまうが長ズボンを借りるわけにはいかない。ウエストも緩々だった、真治も細身だが、女性と男性ではサイズが違いすぎるのだ。しかたなくベルトで思い切りウエストを締める。 クローゼットを出ると、既に支度を終えていた真治はリビングでスマホを見ていた。住所は伝えていた、それを検索して大方の紗栄子の住まいを覚えたらしい。 「行くか」 言ってローテーブルにあった鍵を手にした、車と自宅のものだ。 横浜駅近くの大規模マンションだ、その地下からスポーツタイプの電気自動車が滑り出す。
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