【目を開けるとそこには】

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聞くと、真治はハンドルを持ったままちらりと視線を紗栄子に向けた。この上聞くのか、空羅自身に話しているのはおかしいと思ったが、紗栄子たる空羅は、なんとも慈愛に満ちた瞳で真治を見ている。 真治はため息をひとつ吐いて話始める。 「元は先輩のイジメだな」 「──イジメ?」 「俺のひとつ上の先輩がな、まあ元々口は悪いし、悪ノリもする先輩だったけど、ターゲットを見つけたと言わんばかりに空羅をいじりまわすんだよ。服装や外見を取り上げちゃあ変に持ち上げたり、けなしたり──しかも空羅も何を言われてもにこって笑うだけだったから、どんどんエスカレートして、周りもやめろって言うんだけど直らなくて。挙句には一発いくらでやらせろなんて言い出してな、空羅が風俗嬢だなんて知らずに言った言葉だったけど、さすがに空羅の顔が凍り付いたのが判って、ちょっとキレちまったんだよな、おい原田って説教してやった」 皆も腹に据えかねていたのだろう、揃って援軍してくれたお陰で以来先輩はすっかりおとなしくなった。
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