【目を開けるとそこには】

4/53
478人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
言って紗栄子の手を引き、抱き寄せ空いた手で布団を捲り紗栄子その中に包み込む。 「いや……! いや! 離して!」 「んだよ……」 「警察! 警察に連絡するから!」 慌てて両手両足を使って男の体を押し離そうとする。 「警察?」 男ははっきりと目を覚ました、切れ長の目がより美男子ぶりを上げて、紗栄子は図らずも気が緩む。その瞬間、男の腕に力が入って紗栄子は力強く抱き締められた。 「なんでだよ」 「だ、だって……!」 紗栄子は闇雲に暴れた、だが密着しすぎていて思うようには離れない。 「あなた……っ、私をレイ、プ……!」 事実を認めることができず口ごもった、とにかく逃げたいと男の体に爪まで立てて脱出を試みるが、男は不機嫌に「はあ?」と低い声を上げる。 怒らせたか、こんな状態で怒らせたら、そのまま殺されてしまうかも──一瞬恐怖は湧いたが、辱めを受けてまで生きている意味はあるのかと思い直し、今度は目いっぱい爪を食い込ませて押し離しにかかる。 「空羅(そら)」 低い声で呼び、紗栄子の両手首を掴んで自らの体に痛みを加える手を無理矢理離すと乱暴に押し開き、ベッドに押し付けた。 「嫌……!」
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!