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そして、翌週の金曜日に再び春と会う事になった。
よく太陽が照らされたテラスの席を選んで正解だったと我ながら感じた。
「あのすみません、傘までお借りしたのに私の分まで奢ってもらって」
申し訳なさそうにしつつ自分の方へお互い一緒のアイスコーヒーを引き寄せた。
「大丈夫だよ、寧ろ俺自身の自己満足の為に付き合わせてしまった気がしてるから気にしないで」
「自己満足だなんてそんなことありませんよ。あの傘のおかげで私は風邪も引かなくて済みました。
だからそんな悲しい事は言わないでください」
春は俺の言葉を否定し、俺の行動に対しては心からの感謝を抱いていた。
そんな彼女を見ているとどうしてかもう存在していないはずの「心」と呼ぶ物がかすかに動いた気がした。
「ありがとう。こうして君とまた会えたのは嬉しい限りだよ」
と言いながらコーヒーを飲んだ。
「…‼︎」
この時俺はただ単に彼女とまた再開できた事に嬉しく思っていると告げただけだが
春は顔を真っ赤に染めていた。風邪をひいていないと言っていたが実際は無理をしているのではないかとこの時に俺は想っていたが
どうやら春は違う風に捉えていたみたいだった。
後々にこの時にやんわりと俺が春に告白していると捉えていたみたいだった。
「いつもこのカフェに居るんですか?」
「え?」
「その、変な意味はなくてさっき店員さんが『いつもご利用ありがとうございます』ってその…」
「あ、ごめん。まだ俺の名前名乗ってなかったよね?俺は玖原 司です。」
「玖原さんに言っていたので気になって…」
「あぁ、そういう事ね。そ、よく来るんだよここには主に人間観察って感じでね」
「人間観察?」
「そ、変わってるでしょ?」
半ば、自虐気味に笑って見せた。
こういうおとぼけた感じで自分を話のネタにするのはいつからし始めたのかも覚えていない。
大体はこう言えば好奇な眼差しで見るか嫌悪感むき出しにして席を立つかのどちらかしかない。
仕方がないと言えば仕方がないと俺にはそう想える。
だって、俺の取り巻く環境が実に歪で滑稽で世間一般的な家庭からもかけ離れているのだから。
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