13 コンビニのファンさん

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13 コンビニのファンさん

 翌朝、いつものように二人揃って朝食を食べた。昨日の和解以来、共同作業が板についてきた。もちろん、夫婦的な意味ではない。  ちなみに昼食はパスタや焼きそばといった麺類、夕食は弁当というのが多い。ゆゆしき食生活である。コンビニしかないのだから仕方ないのだが、健康的な生活のためにも改革が必要だと思った。 「昨日はご苦労さま。今日は町を見学しようと思う。一緒に来てくれないか?」マリンを誘ってみた。 「いいわね! じっくり見てみたかったの」マリンはたまごサンドを頬張りながら嬉しそうに言った。  食事が終わり、出かける準備をした。初めて王として町に出るのだが、着ているものはいつものデニムパンツとTシャツだ、マリンはまたもやジャージ。とは言っても、この家にはそんなラフなものしか置いてない。ファストファッション系の店が欲しいなと思った。  玄関を出ると、飲み物を買うためにコンビニに入った。  ドアを開けると店員のファンさんが「オハヨウゴザイマース!」とにっこり笑って挨拶してきた。  外国からの留学生と言った雰囲気で、会話は問題無いがアクセントに癖がある。名札に店長と書いてある。 「王妃と一緒にお出かけですか? 仲がいいですねー」ファンさん、それは誤解。  隣に立っていたマリンがスッと距離を取った。少し顔が赤くなっているように見える。  そして、お茶とスポーツドリンクを買った。ファンさんは袋に詰めながら嬉しそうに言った。 「やっと家に帰って寝られます! アリガトウゴザイマース!」  裏手の倉庫で寝ていたらしい。申し訳ないことをした。 「いつもありがとう。いい国にするから、これからもよろしく」と言ってコンビニを出た。
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