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01 巨大建造物
とある日、いつものように巡回にでかけた。少し走るとすぐに国の端に行き着く。
そこに多くの市民が集っていた。こんなに多くの市民を一度に見るのは初めてだった。
車を止めて、マリンと群衆の中に割って入った。
「王様、あれを見てください!」市民の一人が、そう言って遠くを指差した。
白い水平線の彼方に丸い建造物のようなものが見える。かなり距離があるのに、形が分かるのだから巨大なものに違いない。
「昨日までは何もなかったのに、今朝、散歩していて見つけたんです」背の高いほっそりした男が言った。
マリンと顔を見合わせて、違うという合図を送りあった。あんな大きなものは、投稿しても作れないことは、分かっているのだけれど。
そして、頷いた。お互いやるべきことは分かっている、という意味で。
連日の共同作業で心が通じ合い、以心伝心の域まで達していた。くどいようだけど、夫婦的な意味ではない。
「みなさんは家に帰ってください。家からしばらくは出ないでください」そう群衆に告げた。そして、管理メニューを出して、全市民に向けて、その旨を通達した。
「よし、行こう!」そう言うと、車に乗り込んだ。
いままでは目標物は何もなく、この町から出たことはなかった。
これから未知のエリアに行く。少し恐怖心もあったが、大事な市民の命にかかわることだけに、見過ごす訳にはいかない。
マリンは緊張しているのか、ハンドルを握る手が震えている。そっと手を添えた。大丈夫だよという気持ちを込めて。
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