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02 ビッグメロンパン
なにもない白い世界。ただ、ひたすら車を走らせる。電気自動車なので、ほとんど音がしない。
周りに目標となるものがないので、今、移動しているのかさえ分からなくなってくる。前方には白い大きな物体が見える。
「私達以外の誰かがいるのかしら?」マリンが神妙な顔で言う。
「あんな大きなものを一晩で作れるわけないから、きっと誰かが投稿したに違いない」そんな事が可能なのだろうか? とにかく行ってみるしかない。
1時間くらい走った。徐々にその姿がハッキリとしてきた。
二人同時にあっと声を上げた。見覚えのある建物だった。
「あれはビッグメロンパンだわ!」マリンが大きな声を出した。
「5万人は収容できる帝都で一番大きなスタジアム」自分に言い聞かせるように呟いた。
車はスピードを上げて、さらに近づいていく。もう目と鼻の先だ。
程なくして、その巨大なスタジアムに到着した。見上げてしまうほどの巨大さに圧倒された。
ビックメロンパンは普段はプロ野球の公式戦が行われ、その他にも有名なアーティストがコンサートを開いたりしていた。
メロンパンのような見た目からそう呼ばれている。うぐいす色の屋根は圧縮空気によって膨らんでいる。
「誰が何のために?」マリンは見上げながら言った。
「とにかく中を調べてみよう」
全く人の気配がない。入り口は複数あって、どれも開いているようだ。一番近い、ひときわ大きな入口に向かった。
中に入ると少し耳がツンとした。屋根を膨らませるために気圧を変えてあるからのようだ。
中はガランとしている。広大な空間が広がっている。人工芝を観客席がぐるりと取り囲んでいる。
人工芝へ降りることは出来ない。観客席の先端まで歩いてみた。誰もいないのに照明が点いていて、眩しいくらいだ。
「あんたたち、だれ?」突然、背後から声を掛けられた。
驚いて振り返ると、少女が立っていた。
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