06 会議をする

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06 会議をする

 今、この世界に衣食住は揃っている。しかし、まだ足りないものがある。  それは仕事。仕事によって世界は潤い、人は生きる価値を見いだす。  何もしなくても生きていけるのに、労働なんて無駄なことと考える人もいると思う。  事実、無制限のクレジットカードによる買い物は、必要以上に買ったり、浪費することも少なくないようだ。ファンさんが証言してくれた。  仕事によって、今この世界に足りないものを生み出す。それが大事なことだと思う。  そんな内容を真面目に語った。目の前の女子二人に。熱く。 「タピオカミルクティーは、紅茶以外でも美味しいよ」加代は一方的にマリンに語っている。 「王の話を聞いていたかな?」無視かよ、加代だけに。思わずムッとしてしまった。 「ちゃんと聞いていたわよ、足りないものは何か? って話でしょ?」加代はうるさいハエを追い払うような口調で言った。マリンは仕事という言葉に一瞬、暗い表情を浮かべていた気がした。 「私は洋服が欲しい! 可愛いやつ」加代はそう言うと、ジャージ姿のマリンを見た。そして、それはないわという視線を投げた。 「機能、耐久性、着心地、全てにおいてジャージが最強なのよ! バカにしないでよね!」マリンにとって神聖なものなのだ。ご立腹。 「ファストファッションの工場を作ろう。デザインも機能もいい服を作るんだ。加代に縫製工場を作ってもらえば、設備も揃うし、材料も自動で補完される。従業員は町から募ればいい」 「それはいいアイディアだわ、ウニクロみたいなブランド」加代は目を輝かせている。 「そうなると製品管理をする、マネージャーが必要ね」マリンは右上の虚無な空間を見つめながら言った。考え事をするときのいつもの癖だ。 「私はデザインがしたい! 可愛い服を作りたい!」加代は身を乗り出して力強く言った。目の前に加代の顔が接近してきた。丸顔に大きな目が光る。 「ブランド名は、nakamaにしよう。なろ王、加代、マリンの三人の頭文字を繋げた。そして、初代社長はこの、なろ王だ」二人は仕方ないと言った表情を浮かべている。  この世界では妄想を現実化出来るのだ。それから三人で細かい内容を話し合った。
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