1人が本棚に入れています
本棚に追加
ガッチガチのボーイズラブ。フリフリの服を着たイケメン弟が向き合ってる。
ここは麻布十番の路上。美少年解放区とネットでは命名されるほどの隠れスポットである。
「何だか仲睦まじい様子」
「うらやまけしからん」
「ねぇ、兄貴。俺にもチョコレートくんない?」
「馬鹿、俺達は男同士だろ」
「男がチョコを贈っちゃいけない法律はないぜ、兄貴」
「そ、そうか。実は持ってるんだよな。チョコを」
兄はポッと頬を赤らめつつ令和製菓の『女人禁制ガチ漢の大人味激苦ビターと思いきやかなり甘々な【ぼくたちの】チョコレート、チョコレートくん」を渡した。なんだそりゃ。
それを受け取った弟が、「おい、そのチョコレート君の味は」
兄貴が最近ハマり始めた「魔法尼僧ツルキュア【御破門!還俗編】公式監修・お台場ギルティ・メイドカフェ」の限定メニューだった。
「んぐっ」
兄が弟にチョコレートをプレゼントする。
「うわぁ。お兄ちゃん、そんなチョコレート、俺にあげちゃうんだ」
「といいつつ、貰ったじゃねーか」
兄の含み笑いがする。
「えーっ、俺、貰っちゃったよ……」
弟は喜んではみせるのだが…。
この俺を差し置いて二次元に浮気するとはたいがいである、と苦々しくおもいつつも、やっぱり「男の子」な面を持つ兄貴はかわいいと思ってしまう。
「つか、兄貴、公式カフェ行っちゃったんだ?」
そうだ。ショップ限定のコラボグッズがここにあるという事は、つまりいとしい弟をさしおいてベリショメイドに浮気した証明になる。
しかし、それは置いといて、二次の女もまぁまぁかわいい。
「兄ぃ…くの、くのっ」
弟を気遣う振りをして同じ沼に嵌めるとはヒドイ。甘い肘鉄攻撃で報復。
「んぁー?ツル・シャクティに萌えた? 嫁に貰うならもっと貰ってきてやるよ」
兄は限定チョコのオマケシールを取り出した。期間・枚数限定の来店特典である。しかも兄と来たら今期のレギュラーをフルコンプ。
足げく通っていたのか、こーれーはー許せん。
「俺も貰う。嫁コンプしてえ。つか、今度連れてってくんない?いや、今すぐ、今日」
「え、えええぇ」
兄貴は仰け反った。弟の魂胆は見えている。兄者が他の女になびかないよう監視しつつメイドカフェで兄弟デート。
「ん、チョコレートくん。俺達の愛は永遠だから」
こうして兄弟はその日、ギルティ・メイドカフェをふりふり装束で訪れた。
「んー。兄者の嫁ってツル・サラスヴァティだったの?」
「そういうおめーこそ、カリョービン様を娶るとは、このミーハー」
メイドたちは唖然としつつチョコレートをかじる二人にチョコレートくんを捧げることとなった。
最初のコメントを投稿しよう!