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ご飯は私が作っていて、他の家事も父にはできないことが多かった。父がやっていたのはお風呂の掃除とゴミだしくらいで、ゴミだしに関して言えば、その日に何を出すのか、玄関に用意しておいてあげないとできなかったので、あまり手伝いになっていなかった。むしろ、用意して、ゴミを出さずに置いておく私の方が配慮していたと思う。父には自分が私に何かをしてあげているという自信が必要だった。もちろん、生活費や学費は父が払っていたし、母から何か支払いがあったとは思えなかった。多分、父は母に連絡する方法もわからなかったと思う。
父は家に帰ってくると、まずスーツを脱いで、ジャージをはく。ジャージは私が量販店で三組まとめ買いしたものだ。父は着替えを終えるとすぐにお風呂に向かう。父はスポンジと洗浄剤の入ったスプレーを持って、一生懸命浴槽を磨いていた。父は浴槽しか洗うことをしない。私も指摘しなかったし、父は自分で浴槽以外が私に洗われていることに気づくことはなかった。父が浴槽磨きに満足してリビングに戻ってくると、私はご飯を盛り付けた。私もあまり料理上手とは言えなかったので、炒め物かカレーくらいのレパートリーだった。けれど父はご飯に何か注文を出したこともなかった。
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