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「ほら、自分の妹のおっぱいにあるほくろの位置まで把握してるってなんというか……相当な変人、いや変態だよな」
「そりゃ、どうも」
褒めてねえよ、というツッコミを無視して自分のコーヒーに砂糖を足す。
ぼくは妹が大好きだった。
母と離婚した短気な父から逃げるようにシャロンを連れて家を出たのは、ダレンに出会う前だ。
シャロンを学校へ通わすため、ぼくは進学せず昼も夜も働いていた。
一緒に暮らしていても顔を合わせられるのはごく僅かで、ぼくは会えば必ずシャロンに抱きついていたのを思い出す。
別に変な意味があったわけじゃない。
まだ両親の仲がよかった頃からぼくたち兄妹はいつも一緒にいて、その時の癖が最近になるまで抜けなかったのだ。
ダレンに指摘されて初めて気づいた。シャロンは笑っていたけれど、それをどう思っていたのかはわからない。
シャロンが消えた原因は他ならぬぼく自身だったのだろうか。
「お前のことを知ってる俺が引いたぐらいだ。普通の人のならドン引き確定だ」
ダレンはいたずらっ子ぽく笑ってみせる。いかつい見た目のわりに、その顔は結構あどけない。
「それじゃあ駄目じゃないか」
そう言いつつ、ぼくは最早コーヒーと呼べなくなった茶色い液体を飲み干す。
と、ウエイトレスが、ダレンが注文していた料理を持ってきて、それらをテーブルの上に置いていく。ホットサンドにフライドポテト。ダレンは、ハンバーガーにオムレツだった。
「でも、まあ、確かに心配だよな。そのうち、帰ってくるにしろ、連絡ぐらいするだろうし」
早速、ハンバーガーをほお張りながら、ダレンは言った。
「何か理由があるんだよ、きっと」
「理由か。なら、覚悟しておけよ」
「……覚悟」
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