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いつもならその夢は終わりだった
でも終わることはなく意識は夢の中を漂う終わりの見えない闇の中、雪姫と見知らぬ男は立っていた。
闇の中なので男の顔は見えない。
だが、声は闇にかき消されることなく雪姫の耳に届いた。
「もうすぐだ。」
男の澄んだ声が、闇に響く。
「何がもうすぐなの?」
男の中の高ぶる感情を感じ取り男に問う。
「貴女様が、こちらの世界に戻ってこられる日が。」
困惑している雪姫を目で制し男は続ける。
「貴女様が、こちらに戻ってこられた時…全てが動き出す!その時が近付いているのです。」
男の声には喜びが滲んでいて雪姫をさらに困惑させる。
「……良く、わからない。」
不安げな表情を浮かべている雪姫に向かって、男は先程と同じ笑みを含んだ口調で語り続ける。
「その時になれば分かりますよ。雪の姫君……あっ、今は雪姫様でしたね。」
「雪の姫君…って、何?あなた、何を言ってるの?」
男は雪姫を惑わすように引き込むように笑みを深める。そしてふと上を見上げ……
「……そろそろ時間ですね。それでは、私はここで。……次は、あちらで。」
男の言葉が終わると同時に、強い風が吹き始めた。
「…この風は……待って!!『___』!!」
遠ざかり見えなくなっていく男を引き止めようと、雪姫が声を上げた時、男は姿を消していた。
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