目覚め、日常

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目覚め、日常

____ジリリリリリリリリリリ ガチャッ 「……夢か」 目が覚めて、雪姫が一番に口にした言葉はそれだった。夢の内容は、覚えていなかったが、不思議な感覚が残っていた。 懐かしい。それが、一番近い気がした。 ―――ジリリリリリリ 思考に沈んでいた雪姫は、顔を上げた。 目覚ましの音が鳴り響く。 「さっき止めたのに……」 鳴り続ける目覚ましを再び止め、雪姫は、制服に着替えて黒い髪を整えた。 リビングに下りると、朝食を並べている母がいた。 「お母さん、おはよう。」 声を掛けて、椅子に座ると母はこちらを向いた。 「おはよう。早いわね。そうだ、雪姫。今日は、暑くなるみたいだから気を付けてね。」 母が、普通に言った言葉、それは雪姫を最悪な気分にするのに十分だった。 「え…っと、それって、二十度超える?」 おそるおそるという風に、雪姫は聞く。 「ええ。確か、二十八度くらいだったわよ。」 母の言葉に、雪姫は諦めたような顔になった。 「……わかった。なるべく無理はしないようにするから。…いただきます。」 そう言って、雪姫は暗い顔で朝食を食べ始めた。 学校。 体育の授業で、雪姫は倒れる寸前だった。 当然だ。雪姫は常人より体温は低いが、熱や暑さに弱く、二十五度で倒れるか・倒れないかというくらいなのだ。 そんな雪姫が、真夏の校庭で運動など自殺行為だ。 「雪姫ちゃん。…大丈夫?」 もうすぐ限界というときに声を掛けてきたのは、仲の良いクラスの女子だ。 雪姫は、無言で首を振った。 「先生、雪姫さんの体調があまり良くないようです。」 「保健室に連れていきなさい。」 「はい。……ほら、保健室までは歩いて。」 声が頭に響く。気持ち悪い。 「雪姫ちゃん!!」 周りのざわめきが意味の成さないものになっていく。 そこで雪姫は、意識を失った。
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