3人が本棚に入れています
本棚に追加
響く声
―――カチ カチ カチ
時計の音に雪姫は目を開けた。
「……またか……」
あたりを見渡し、ここが保健室であることを確認した雪姫はため息をついた。
たぶん、学校は終わっている時間だろう。
雪姫は夏、倒れると学校が終わる時間まで眠っていることが多い。
「先生?」
人の気配を感じ、カーテンの外に目を向ける。
「雪姫さん?目が覚めたの?」
担任だ。
担任は、雪姫が目覚めたのを確認して言った。
「もう生徒のほとんどが帰ったから、あなたも帰りなさい。」
思った通りだ。
雪姫は無言でうなずいて、ベッドから降りた。
「外は暑いから、気をつけなさい。」
外に出ようとした雪姫に、担任が言った。
「わかりました。」
短い返事だけ返して、雪姫はドアをあけた。
「…あつ……っ。」
保健室はクーラーが効いていて涼しかったが、一歩外に出ると地獄だった。
いや、普通の人なら耐えられるだろう。だが、雪姫には、耐えられるものではなかった。
(…意識…飛びそう…。)
雪姫の意識は朦朧としていた。もう、どこを歩いているか分からなくなるくらいに。
だから、気づかなかった。
周りの景色が、いつもとまったく違うことに……。
「…限界…。」
目を開けていられず、そのまま意識を闇にのまれていく。
「雪姫!」
誰かに名前を呼ばれた気がした。
(…だれ…?)
とても懐かしい声……。
だが、声の主を確かめることもできずに、雪姫は意識を失った。
最初のコメントを投稿しよう!