お嬢様のお城のお話

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シブやタケル様とは違う態度。 特別扱いを受けているという証拠。 私にとってお嬢様は救世主なのだから。 「で、どうしてくれようかしらね、幹?」 「申し訳ありません」 謝罪する。 その理由の心当たりはいくつもある。 今回、私は『彼』を足止めすることしか出来なかった。 シブが一人でやってくれるとばかり勝手に決め付けていた。 お嬢様から見れば、私が用無しだと思われるのも無理はない。 シルクのような純白な御御足(おみあし)で私の腰辺りを差す。 言葉通りで言えば、指差しならぬ足差し。 「持ってたんでしょう?」 「はい」 「どうして使わなかったの」 ラレル。 自殺誘導装置。 英語ではないのは確か。 拳銃型の電波装置。 実際に弾が出ることはないので、 子供向けの玩具と勘違いされやすい。 だが性能は段違いで狙った人間の心に、 雨を降らし暗い闇を落とし込み、 果ては自殺に追い込む恐ろしいものだ。 製作者は、 シブの得物を造った者と同じ者。 お嬢様が語るには、ただの作業員だそうだ。 ただの作業員がこんなもの作れるはずがない。 そのラレルは今、私のズボンのポケットにある。
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