お嬢様のお城のお話

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触れると固いものの感触。 拳銃だということが改めて分かる。 お嬢様は呆れたように長い溜息を吐かれた。 私にとってはその仕草も興奮の1材料になる。 でもそんなことを口にする真似はできない。 今は、お嬢様と真面目な話をしているんだ。 言葉を交わすことができている。 それがどれだけ幸せなことだろうか。 「まだ使えないの?」 「申し訳ありません」 「はぁ…あなたに渡した私がいけなかったのかしら」 「い、いえそんなことは」 「いい?それはね、私の分身なの。とは違ってね」 純一無雑な右の御御足(おみあし)で差した場所は、 先程、お嬢様が『目標』の髪を差し出したところ。 暗い部屋。 鉄格子。 桎梏(しっこく)。 チリチリになった木屑が散らばり、 鼠色に塗られた床が所々剥がれて落ちている。 人の群生が鏡張りに映っている。 「………」 中には、 一人の少女。 お嬢様と似て非なる者。 ボロ雑巾のような布を一枚羽織り、体育座り。 震えてはいないが至るところに 切り傷擦り傷が確認できる。 お嬢様よりも前髪が長い。 その髪はバサバサで酷く荒れている。 蚊や蝿でも飛んでそうな感じに腐れていた。 お綺麗なお嬢様とは大違いだ。 けれども顔のパーツはどこか似ている。
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