お嬢様のお城のお話

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用済み。 その烙印はもう嫌だ。 あの頃には戻りたくない。 お嬢様に救われたこの命。 お嬢様のために最期まで使い倒したい。 私は両膝をついて懇願するようにお嬢様を見る。 あぁ…見目麗しいお顔。 「じゃ、じゃああの時掛けてくれた優しいお言葉はっ!?」 「優しいお言葉ねぇ…私そんなこと言ったかしら」 「あの言葉も嘘だったんですが!愛も」 「ええ、全部嘘」 そう云い放たれ、私は自棄になった。 お嬢様への忠誠心が憎しみのそれに変わる。 気づけば、お嬢様にラレルを向けていた。 「くそっ!!」 お嬢様に助けられる前に 散々使っていた言葉なのに。 いつの間にか汚い言葉だと思うようになった。 お嬢様は組んでいた足を組み替える。 そして狂ったものを見るような瞳。 まるで余裕だとでも言いたげに。 「撃てるの?撃てないあなたがこの私に向かって?はっ、笑わせないでちょうだい」 「み、見てろ!」 ここまで言われては引き下がれない。 引き金を手に全ての憎しみを集中させ手に力を込める。 そして、引く。 つい目を瞑ってしまう。 普通の拳銃ならパンっと音がするはずが全くの無音だった。 本当に撃てたか分からないくらいに。
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