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どうやらお気に召さなかったらしい。
当たり前だ。
こんなものでお喜びになるはずがない。
シブはなんてものを盗ってきたんだ。
お嬢様の大好物を盗ってきたらいいものを。
シブは、なんとか取り繕うと弁明する。
「しゃーなかったんすよ、盗れるものがそれくらいしかなくて」
「はぁぁぁー…目玉の一つくらい取ってきなさいよ」
「いやいや、流石にこの扇子でも廻せませんて」
シブは、
お嬢様に自らの得物である扇子を自慢するように見せつける。
大きい傘のようなもの。
赤、青、黒と三色彩った傘。
開く角度によって名称も変わるという。
中を開いてみると、
茶屋にあるような赤い野点傘に変わる。
どういう構造になっているかは知らない。
お嬢の知り合いである作業員から貰ったという。
謎だ。
シブが謝らないので私が代わりに頭を下げる。
「申し訳ありません。お嬢様」
「まぁいいわ。今日はこれで勘弁してあげる。それにしても美味しそうね。
ねぇ、幹、それ、一口サイズに切ってくれない?」
「はい、かしこまりました」
お嬢のご命令とあらば、
この醜い髪にも触れることができる。
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