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彼の名は、タケル様。
学年で例えるなら小学生三年生ぐらいの児童。
お嬢様がどこからか拾ってきた。
捨て子。
きっと親が先立つものがなく仕方なく捨てたんだろう。
その親に同情の余地もない。
先立つものがないのに子供を作る方がおかしいのだ。
タケル様は、泣いてお嬢様に駆け寄る。
「あらら、ごめんね。大っきい声出して」
宥めつつ頭を撫でる。
そして表情から怒りが消え、喜びが出てきた。
お嬢様のお優しい笑顔。
これは私も癒された表情のひとつ。
眼を細め、唇を薄く伸ばす。
その狂ったものを見詰めるその笑顔が好きだ。
「ふぇっーんふぇぇぇん、ひっく」
「よしよし、もう大丈夫よ」
「ん、ひっく…もぉだいじょうぶ?おっきいの出さない?」
「うん、出さない。はい、いつもね」
お嬢様はタケル様の頭を両腕でめいいっぱい包み込む。
おまじないを唱える。
それはタケル様が不安定になる度にしている行為。
赤ちゃん返り。
それが赦される年齢だ。
私がしようものならお嬢様に嫌われてしまうだろう。
「怖いの怖いのとんでけー、はい、タケルも一緒に」
「こ、怖いのとんでいけー」
「せーの」
「「怖いの怖いのとんでけー」」
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