お嬢様のお城のお話

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お嬢様のお城のお話

「た、だっだいまっすー!」 「ただいま帰りました、お嬢様」 私とシブが帰ると、 いつものように「おかえりなさい」と お嬢様は狂ったものを見るような笑顔で出迎えてくれた。 これが一番の癒し。 今日もお美しいお嬢様。 漆黒の長い髪。 真黒のドレス。 純白の素肌。 それぞれが合致して天使のようなお姿。 私には眩しすぎる存在。 だけど私にはお嬢様しかいない。 「帰ったよん、おーい」 シブは、鉄格子に向かう。 その箱の中にはもう一人のお嬢様。 腕輪、首輪、鎖。 桎梏(しっこく)を付けたもう一人のお嬢様。 身体中の至る所に傷跡が確認できる。 醜い。 その感情だけが迸る。 どうしてお嬢様はこんな醜いものを放置しているんだ。 お嬢様は、一人で良いはずだ。 「シブ、私はこっちよ。いい加減覚えなさい」 「冗談っすよ、お嬢」 「で、どうだったの?というかそれは?」 お嬢様は、シブの持っている物体についてお尋ねになった。 それは髪の毛。 お嬢様の御髪(おぐし)とは全然似つかわしくないもの。 どうしてこんな醜悪なものを欲しがったんだろう。 「『目標』だったやつの髪っす」 「はぁ?髪?」 お嬢様は呆れたように溜息を吐いた。
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