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しかし、それも簡単に捕らえられてしまった。
「ほら、こっちの世界へ来た方が楽なんだから」
「いやああ!!」
亜沙美は必死に抵抗しているが、火傷のせいで体力を消耗しているようで寮母さんの手から逃れることができない。
「知枝!」
不意に名前を呼ばれてあたしは視線を向けた。
どうにか立ち上がった真仁があたしに手を伸ばしている。
あたしはその手を握りしめた。
「今動けるのは知枝だけだ。みんなを助けないと!」
「でも、どうやって!?」
先輩たちは薬物入りのクッキーを食べてぼーっとしているけれど、全員を助けられるとは思えなかった。
「外へ出て助けを呼んで来てくれ!」
それなら、あたしにもできそうだ。
「あら、逃げるつもり?」
亜沙美に注射を打ち終えた寮母さんが、ゆっくりと振り向いた。
その目はあたしを捕らえている。
「くそっ」
真仁は舌打ちをすると同時に、テーブルに置かれていた壁を寮母さんめがけてひっくり返した。
中に入っていた熱された油が、寮母さんの頭にぶちまけられた。
「ギャアアア!!」
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