ささやくように

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 3年遅れのスタートラインに立ったのは、この春から社会人となった藤堂優である。  3年遅れというのは、1年浪人をしたというのと、6年制の大学に通っていたためである。高校の同期は、すでに社会人としてのキャリアを積んでおり、社会の先輩である。  「優、ゆうってば、ねー、聞いてる?」  我にかえると、沙月が怪訝そうな顔で手を振る仕草をしていた。どうやら、いつの間にか自分の世界に入り込んでいたようだ。 「あ、ごめん。ちょっとぼーっとしちゃてた。」    
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