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青い宝石
「ゆっくり顔を上げて、周囲を見渡したが何も異変はなかった。だが、またガサガサっと聞こえるのだ。」
「……」
「私は音のなる方へゆっくり近ずいた。そしたら、ひとつの死体が、ピクピクと動いているようだった。」
「死体が?」
「そうだ。」
お姉さんは白い太ももを組み替えた。
「頭のない死体だった……それなのに動いていたのだ……」
「……」
「どうだ。ソーマ。怖いだろう?」
先生は少しイタズラに笑っていた。
「……やめてくださいよ。話を続けてください…」
「なんだ。つまらないなぁ。」
お姉さんはちょっと口をとがらせて、顎に右手を置いた。
「その死体はな、ピクピクと動くだけではなかったんだ。数秒後に、スーッと起き上がった。」
「そしてそのままよろよろと体育館の外へ出て行くのだ。」
「……」
「私は隊員に連絡して、内密でその歩く死体を追った。」
「何故かその死体に顔はないからもちろん口もないんだが。どこかからか、
生きたい…生きたい…生きたい…
と、小さな声が聞こえてくるんだよ。」
「……」
「……」
「もっと怖がってもいいんだぞソーマ。」
「……もお、真剣に話してくださいよ。」
ソーマはため息をつきながら言った。
「ッハハ。分かったよ。割と私は怖かったんだがな。」
「え、でもお姉さんは人喰いを沢山見てますよね。怖くないんじゃないんですか?」
「……いや?確かに見てきた。だが、私が見てきた人喰いっていうのは、頭が弱点なんだよ。」
お姉さんは右手で自分の頭ツンツン突く。
「頭のない肉体が、ゆらりゆらゆら、ゆっくりと街を歩いていくんだ。人喰いでもない"何か"がな……怖いだろう?」
俺はゴクリと唾を飲んだ。
「確かにそうかも。」
俺だってリアルで見たら叫ぶかもしれない。
「そして街まで出たそいつは、そのまま壁に体をずりずりと擦りながらも路地裏に入っていった。」
「……」
「そしたら壁際に置いてあるゴミ箱にぶつかって、スポーンと入って蓋が閉まってしまった。」
「それって……ということは……」
ソーマは頭を指でかいた
「そう。その後3日間監視すると、さっきのように君がでてきた。同じ服装でな。」
「つまり、君が首なし幽霊って訳だ。よろしく!ユーレイ君。」
お姉さんはスっと嬉しそうに握手を求めた。
「いや!ちょっと!待って下さいよ!俺ユーレイじゃないですよ!」
「うーん。だったら人喰いか?」
お姉さんはサラサラな髪の毛を揺らして首を傾げる。
「いや!どっちかって言ったら多分……人喰いですけど…俺人間です!!
ほら!お姉さんに襲いかかっていないし!」
「……確かに。私を食べ物と思っていない所。それと、人間以外の肉を食べれる所は、人喰いとは違っている。」
「人喰いって人間しか食べられないんですか?」
お姉さんはコクリと頷いた。
「なんせ、『人喰い』だからな。けど君は鶏肉も牛肉食べれる。不思議だ。」
お姉さんはペラペラとメモを見る。
あ、そのメモ、俺の生態観察だったのね……??
ソーマは冷めてしまったステーキを、ボムッっと頬張った。
「……君は自分が人喰いだと思うかい?」
「うーん……俺はこの前生活してた時と一緒の感覚だし、特にそんなこと無いんだけど。」
ソーマは腕を組んで首を傾げる。
「もし君がが人喰いだと分かってしまったら?」
「……それは……そんとき考えますよ!俺は人を喰いたいと思わないし、
身体が人喰いでも人食ったこと無いから、人喰いではないですしね。」
するとお姉さんは、顎に手を当てて、しばらく考えた
「……ふむ。よし。ひとつ、君が簡単に人喰いかどうか分かる方法があるぞ。」
「え、簡単に?どうやるんですか?それ。」
お姉さんはポケットからなにか青い小さい粒を取りだした。
「これを見ろ。サファイアだ。」
「へぇー。真ん中に穴が空いてる!ブレスレットに使うビーズみたいですね。」
「これを見てなにか思うか?ソーマ。」
「え……何かって言われても……綺麗っすね?」
それ以外、別になんとも思わなかった。
ふつーのビーズだ。
「ふむ……そうか。じゃあこれを君に譲ろう。」
「え……えー。うん。やったあー。」
うへぇーーいらねぇぇーー。
正直嬉しくなかった。女の子でもないし、別に宝石なんて。
お姉さんは前かがみになって、俺の手の上にビーズをポトっと落としたかと思ったその時。
カッ!コロコロコロコロ
ビーズは俺の手を通り抜けてそのまま机に落ちてしまった。
「え、確かに今……取ったよな??」
「フッ。やはりな。……ソーマ。」
「は、はい!」
「何も言わずにすまんな。手のひらを見てみろ。」
「え?」
俺は言われるがままにバッと手のひらを見た
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