覚悟

1/1
前へ
/38ページ
次へ

覚悟

「それじゃ、ソーマくん。人喰いになった君は、人喰いを倒す為に強くなりたい。そうだね?」 「へ?あ、はい。結論をいえばそーっすね。」 ソーマはお風呂を貸してもらったのか、血で汚れたシャツから〔さんま〕と書かれたTシャツをつけながら、リビングへ歩いてきた。 割れた腹筋がちらりと見える。 「私が修行ができるいい場所を紹介してやろう。とても強くなれる所だぞ。」 「え、そんなところがあるんですか!?」 あーそういえば!ハルさん部隊がどうとかって言ってたな! 「もちろんだ。ソーマは高一だったな?君と同じ年齢の子もいるよ?まあ3人だけだけどな」 「ええー!でも3人も人喰いと戦っている奴がいるのか。すげえ。世界って広い……」 「ああ。それだけ、あいつら人喰いは多くのものを奪ったんだ。」 ハルさんは、そういうと下を向いて、なにかを思い出しているようだった。 「……」 ソーマはそれに気づいて、喋れなくなってしまった。 だがすぐにハルさんはソーマに向き直る。 「葉野 ソーマくん。君は鍛錬できるその場所で、本物の人喰い達と戦わなければならない事がある。 さっきのサファイアの痛み以上に痛くて苦しくて、最悪人喰いに殺されたりするだろう。また新しくできた仲間がまた死んでしまうことだってある。」 「……」 「それでも行くのか。」 確かに、さっきみたいに痛いのは嫌だ。それよりもっと痛いなんてもっと嫌だ。 でも、もし今から普通の高校生をやったとして。 ハナや、もしかしたら高橋も失ったこの心の苦しみが、その平穏な生活を許さないだろう。 また仲間が死ぬのは嫌だ。でも、それはあの時俺が弱かったからだ…… 「お、おれが……!!今度は守って見せます……!!」 ハルさんはずっと俺を見ていたのか、そのまま目線をそらさずに微笑んだ。 「何を考えていたのかは分からないが、どうやらYESって事で間違い無いみたいだな。覚悟も十分あるらしい。」 ギッっと椅子が鳴って、ハルさんが立ち上がった。 「それじゃあ準備しようか。殲滅隊訓練校にゆくぞ。」 「……っっ!はいっっ!!」 「……っとその前に、その服を着替えろ。」 「っっえ!?!?好きなの選んでも良いって言ったからこの可愛いTシャツ選んだのに!!」 ソーマはTシャツの裾をバッと広げ、 でーーん!!!と〔さんま〕を主張する。 「その服が可愛いって、本気で言ってるのか……ソーマ。」 「いや!かわいーでしょ!いやでも、これハルさんのビックTシャツでしょ??ハルさんはこの可愛さ分からないんですか?」 「……それは妹が、私に無理やりくれたTシャツだ。君は妹と趣味が合うのかもな。」 そう言って、ハルは大きめのシャツを、ソーマへほいっと渡した。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加