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覚悟
「それじゃ、ソーマくん。人喰いになった君は、人喰いを倒す為に強くなりたい。そうだね?」
「へ?あ、はい。結論をいえばそーっすね。」
ソーマはお風呂を貸してもらったのか、血で汚れたシャツから〔さんま〕と書かれたTシャツをつけながら、リビングへ歩いてきた。
割れた腹筋がちらりと見える。
「私が修行ができるいい場所を紹介してやろう。とても強くなれる所だぞ。」
「え、そんなところがあるんですか!?」
あーそういえば!ハルさん部隊がどうとかって言ってたな!
「もちろんだ。ソーマは高一だったな?君と同じ年齢の子もいるよ?まあ3人だけだけどな」
「ええー!でも3人も人喰いと戦っている奴がいるのか。すげえ。世界って広い……」
「ああ。それだけ、あいつら人喰いは多くのものを奪ったんだ。」
ハルさんは、そういうと下を向いて、なにかを思い出しているようだった。
「……」
ソーマはそれに気づいて、喋れなくなってしまった。
だがすぐにハルさんはソーマに向き直る。
「葉野 ソーマくん。君は鍛錬できるその場所で、本物の人喰い達と戦わなければならない事がある。
さっきのサファイアの痛み以上に痛くて苦しくて、最悪人喰いに殺されたりするだろう。また新しくできた仲間がまた死んでしまうことだってある。」
「……」
「それでも行くのか。」
確かに、さっきみたいに痛いのは嫌だ。それよりもっと痛いなんてもっと嫌だ。
でも、もし今から普通の高校生をやったとして。
ハナや、もしかしたら高橋も失ったこの心の苦しみが、その平穏な生活を許さないだろう。
また仲間が死ぬのは嫌だ。でも、それはあの時俺が弱かったからだ……
「お、おれが……!!今度は守って見せます……!!」
ハルさんはずっと俺を見ていたのか、そのまま目線をそらさずに微笑んだ。
「何を考えていたのかは分からないが、どうやらYESって事で間違い無いみたいだな。覚悟も十分あるらしい。」
ギッっと椅子が鳴って、ハルさんが立ち上がった。
「それじゃあ準備しようか。殲滅隊訓練校にゆくぞ。」
「……っっ!はいっっ!!」
「……っとその前に、その服を着替えろ。」
「っっえ!?!?好きなの選んでも良いって言ったからこの可愛いTシャツ選んだのに!!」
ソーマはTシャツの裾をバッと広げ、
でーーん!!!と〔さんま〕を主張する。
「その服が可愛いって、本気で言ってるのか……ソーマ。」
「いや!かわいーでしょ!いやでも、これハルさんのビックTシャツでしょ??ハルさんはこの可愛さ分からないんですか?」
「……それは妹が、私に無理やりくれたTシャツだ。君は妹と趣味が合うのかもな。」
そう言って、ハルは大きめのシャツを、ソーマへほいっと渡した。
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