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のぶながおにいさん
「着いたぞ。」
赤い車のエンジンを切って、ハルさんはゴパッっとドアを開け外に出た。
「ここが新しい君の青春が始まる場所!」
「殲滅隊訓練校だ!!!」
「えええ……廃墟じゃん……」
そこに立ち並ぶのは、廃墟になって1年目ですよ!みたいな学校だった。
どよーん……とか、ぎゃーーーって効果音が、お空に浮かんでいるように、ソーマは見えた……
使われてないところは蜘蛛の巣も張って、窓がくもっている。
「まあ、廃墟になったおっきな学校を譲り受けて、そこでやっているんだ。だから外見とても古いが、一応は国から許可を貰ってやっているんだよ。一応はな。」
「うーん……お化けでそう……」
「……………………出るぞ」
ハルさんは俺の耳元でボソリと呟いた。
「出るの!?」
「嘘だ。出ないぞ。……多分な。」
フフフと満足げに微笑みながら、ハルさんは言った。
「とても不安になるなあ……」
校舎の内側に入ると、でかい整備されたグラウンドと、マシな校舎が見えてきた。
「おおお!!中は割とシッカリしてるじゃん!」
キョロキョロとソーマは周りを見渡す。
「表向きは廃墟だからな。幸か不幸か生徒が少ないから、廃墟らしい所を残せているんだよ。」
校舎に着くとハルさんはドアを開けた。
「まずは校長先生に挨拶をしようか。」
校長室と書いてあるドアがあった。
「ここが校長室だ。入るぞ。」
ハルさんは2回ノックして、錆び付いて重そうなドアをスライドする。
「校長。今お時間よろしいですか。」
「なにようかね。」
ソーマがひょいっと中を覗くと、部屋に数本ロウソクが立てられ、畳の上に鎮座する"まげ"の付いた武将のような人がいた。
うつむき加減で顔は見えない。
ぴしーっ!!と座っていて、笛の音が聞こえてきそうだった。
「お、織田信長……」
ソーマはそう呟いてしまった。
よく見ると刀もあるぞ。
「む、その子は……見かけない顔だな。そなたの弟かね。ハル。」
「いえ。入学希望者です。校長。」
「なんだと!?入学希望者!?……だと!?!?」
織田信長校長は、勢いよくザッと畳から立ち上がりながら、声を荒らげた。
なにか気に触ることでも言ったのだろうか……
「ようこそ少年!!君は、何年生かな??」
赤ちゃんも笑顔になりそうなくらいの笑みだった。
「…………歌のお兄さん??」
ハルさんは俺のつぶやきを聞いてこっちを見た。
「君はさっきから何を言っているんだ。緊張しているのか?」
俺はその言葉で我に返る。
「あ、いえ!あの、1年生です!」
「そうかそうか!1年生か!いやあ!うちは生徒が少なくてね。大歓迎だよ!名前は?」
「葉野 そうまです!よろしくお願いします!」
校長は髭を撫でながらソーマを見る。
「そうかそうかソーマくん。いい名前だ。」
「ソーマくん。この学校に入る時、覚悟ができてるか聞くのが普通なんだが、まあ、ハルにつれてこられたんなら、色々あっただろうし、きっと覚悟も見せて貰ってるのだろう。」
校長はまた座り直した。
「君を歓迎するよ。ようこそ。殲滅隊訓練校へ。案内は頼んだ。ハル。」
「はい。」
校長は素敵な笑顔で僕達を見送った。
校長室からでると、ソーマはブツブツ言い始めた。
「武士なのにござるは使わないのか……ござるは忍者だっけ……」
「さっきからどうしたんだ。少年。」
「あ、いえ。なんにも。ハルさん、校長先生も強いんですか?」
「なんだ?なんで強いか聞くんだ?もしかして食おうとしてるのか?まったく。君はいやしんぼだな。」
廊下を歩きながら、ハルさんは俺の背中をぽんと叩いた。
「冗談言わないで下さい!僕は人喰いじゃないです。」
「残念だけど、校長も強いぞ。」
ハルさんは右手をゆらゆらさせながら説明した。
「校長先生はな、刀の扱いのプロだ。人喰いが瞬きして目を開けると、もう首は空中にある。そんな居合のプロでもある。」
「間合いに入ると切れないものは無い。集中力、速度、攻撃力。これがピカイチだ。プロの殲滅隊だよ。」
「たしかにさっき部屋に入った時すごい集中力を感じたな……空気がピリッとしてた。凄かったなあぁぁ……」
ソーマは顎に手を置いて、校長のすごさを思い出した。
「趣味はサムライ映画鑑賞だ。」
「ええ!?!?あれなりきり!?!?」
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