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朝の集会
「えー、昨晩未明、人喰いによる殺人事件が起きました。男性は朝公園で発見され、発見された時には、死亡していた模様です。」
ソーマが朝ごはんを食べていると、ニュースが流れた。
「へぇー。」
「あら、また人喰い?怖いわねえ。ソーマ。学校からはすぐに帰ってくるんだよ?」
「わかってるよ。母さんそんなに心配しなくても大丈夫だよ。それに他県だし。」
……人喰い。俺が生まれた時から居る、夜な夜な人を襲う化け物で、人の姿に変装するのが得意だ。
だから昼の間は人の振りをして生活しているのではないかと言う噂がある。
「いってきまーす!」
ソーマが学校へ向かって歩くと、小学生が走っていた。
「お前人喰いだろ!!だってなんかブサイクだし!」
「違うよお、置いてかないでよぉ!」
こういった差別やノリも普通によくある。
ソーマがその子らを眺めていると、肩をポンと叩かれた。
「おはよう?ソーマ君。」
「あっ、高橋!」
眼鏡をクイッとあげた、
"七三分けが似合う男"高橋だった。
眼鏡がキランと光っている。
「今日のテストの答案。楽しみだね?」
「うるせーよ。前の運動測定ズタボロだったくせに。」
「何を言ってるんだソーマ君。将来必要になるのは学歴の良さ。頭に良さだ。運動神経なんて関係ない。バカは将来捨てゴマになるだけなんだよ。」
「はあ?動けるやつの方がかっこいいだろ!?お前は走り方、女の子みたいだよな。」
ソーマは、それを思い出してぷぷぷと笑った。
高橋の眉間がキュッと縮む。
「何度も何度も僕をそのネタでバカにしやがって……」
「おっ何やんのか。負けねえぞ。」
両者は睨み合い、歩道の空気をバチバチと悪くした。
「ストップストーップ!!」
ふと声が後ろからしたかと思うと、俺と高橋の間にドーンっと割り込んできた。
小柄な女の子ハナだった。
「まーた喧嘩して!朝だよ?元気に清々しく行こーよ!」
「だってハナ。こいつがまた俺の事馬鹿にしてくんだよ!」
「ちっ、だが君だって、あれだけいじるなと言った事を口にした!!」
「ん……それって高橋の走り方の事?」
「ブフッ!!」
ソーマは思い出してまた笑ってしまった。
「は、はな……!!おいソーマ!!お前だけは笑うなあああ!!」
高橋が俺にハナの怒りをぶつけてきた。
「今のは事故じゃねえか!イテテ。」
ハナはごめんごめんと高橋をなだめた。
3人は家が近くて幼なじみだ。小中高全部一緒でまあ、こんな感じだが、
なんだかんだ仲はいい。
高橋だって勉強で分かんない所あったら
「お前のおばさんに言われたから教えてやる。おばさんに感謝しろよ」
とツンツン言いながらも教えてくれる。
ハナも頭が悪いのでその時も一緒だった
休みの日はハナに誘われてご飯を食べに行ったりする。
ハナは食べるのが好きだから良く美味しいお店に連れて行ってくれて、3人でわちゃわちゃ食べる。
回転寿司は俺と高橋と取り合いになったりするが、その間でハナが笑ってたりして、なんだかんだ楽しい思い出だ。
学校に着いて、教室へ向かう3人。
高校1年の今年はラッキーなことに、3人とも同じクラスだった。
「答案だるいなぁー。また母さんに大目玉くらっちゃうよ。センセー事故って急に入院しないかなあ。」
「お前がサボって漫画読んでるから悪いんだ。」
高橋が眼鏡をクイッとあげた。
「うるせーなぁー。耳タコだよ。」
「たこができるくらい聞いてるならどうして改善しないんだろうな。」
「まあまあお二人共。ん?あれ?みんな居なくない?」
ハナがぴょん!と教室に入ると、中には1人2人しかいなかった。
「あー。これは集会だな。」
ソーマが言うと、ハナはガビーンとショックを受けた。
「嘘!昨日何も言ってなかったのに?」
黒板には「全体集会。体育館集合」とだけ書かれていた。
「校長の話長いんだよなあ。体育館地面硬いから座布団欲しいよ。」
「それ分かるぅ……!」
「バカ言うな2人とも。そんな事したら即刻指導だぞ。とにかく向かおう。」
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