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「やあ!みんな!初めまして!僕カイトって言います!よろしく!」
校長の前に何やら背の高くて長髪のイケメンが舞台袖から躍り出た。
館内はシーンと静まりかえる。
そしてヒソヒソ話が聞こえ始めた。
「誰あれ……」「見たことない人だ。」
「ゲストが黒いTシャツ黒いズボンって……」
「イケメンだけど……アイドルじゃないんだ。」
「期待して損した」
先生たちもゲストの話を聞いていなかったのか、ソワソワし始めた。
「あれあれ、あれれ!!反応悪いなぁ!僕がこうやって君たちの前に来たってのに。歓声も嬉し泣きも、何も無いじゃない。」
カイトという人物は、教壇のマイクをもぎりとって、舞台の縁にたってそう言った。
「もっとこう、さ、うおおおおとか、やったあああとか、聞こえると思ったのに。僕ショックだなぁ。ほら、拍手とか、あるかもしれないと、思ってたのになあ。」
カイトはそう大袈裟に言った後、
チラッチラッと生徒の方を見るが、未だに静まり返っている。
「おい。」
列の1番前の生徒の1人が、カイトのことを呼んだ。
顔のまるいやつ太った奴だった。
「お!なんだい!?おデブちゃん!サイン欲しいのかい??」
「……誰だよお前。」
「…………」
……高橋もハナも全校生徒みんなが、ゲストに対して失礼だと思った。
カイトはとても驚いた顔をしている。
「……いやあ、君ぃ、僕知らない?テレビとかあんま見ない?」
「お前のことなんて知らねえよ。」
「……ふーん。分かったおデブちゃん!君や他のみんなが思い出せるように、君が手伝ってよ!」
「え?」
マイクを置いたカイトがぐるんと回って下に飛び降りて、終始笑顔でその生徒の手を引いた。
「ほら!壇上に上がって!!」
「え、ちょっと……」
ダッダッダと2人は舞台に上がった
壇上に上がったカイトは、舞台の真ん中で、
太った生徒の周りをゆっくり回り、人差し指を振りながら言う。
「きっと君のおかげでね?ここにいるみんなが歓声を上げるよ!僕すんごい有名人だからね!うん!」
「お……おう。」
校長が舞台袖にいそいそとどこかへ行くのに気づいて、カイトは校長を止めた。
「ダメダメ!こうちょー!君はここで座って見ててなきゃダメでしょ?うんうん、いい子だね。正座じゃなくて、もっとリラックスしててもいいんだよー?」
マイク越しで校長に言うが、校長は正座したままだった。
「ま、いっか!よし皆様お待たせしました致しました!私の正体を彼の手助けによって、思い出させてあげましょう。」
左手をバッ!!とあげて、盛り上げるようにカイトは言った。
太ったやつが舞台にいるので、ちょっと面白そうだなと拍手がパラパラ聞こえた。
「おお!!いいね!いいねぇぇ!!!こういう拍手が欲しかったんだよ。次は歓声だ!ぽっちゃりくん!リラックスしてて良いからね。」
高橋はメガネをクイッとあげた後、考えた。
「人を使うということはマジシャンか?確かサングラスをしたマジシャンいたな。ミスターマジックだったかな。」
「では行きます!!ぽっちゃり君。動かないでねぇー。」
「お、おう。」
太っている彼は、緊張して頭の中がグルグルと回っていた。
思った事をズバッと言うのがカッコイイ。
最近俺はそう思っていて、つい言っただけなのに、まさかこうなるなんて。
帰ったら母ちゃんに報告しよう。そして弟たちに自慢するんだ。
シュン!!!!
途端にそう大きな音がした。
風が切れるような音だった。
その音は体育館全体に響き渡り、反響した。
館内が静かになる。
何が起こったのか。
「……もう動いてもいいよ。ぽっちゃり君。ていうか…………動けないよね。」
その次の瞬間を、高橋は遠くからだけど、
確かに見ていた。
壇上の生徒が、足から細かく、ボトボトボトっと崩れ落ちていく所を。
一瞬にしてバラバラの肉塊になった彼を見て全校生徒は、すぐに理解出来なかった。
シーンと静まりかえる。
するとカイトは肉片から、グチャっと腕だけを持ち上げて言った。
「じゃーーん!見て!これで人のお刺身の出来上がりーー!!」
ゾワッッッッ!!
ハナと高橋の体に鳥肌が立った。
そして、その言葉を初めにいくつもの悲鳴が上がった。
校長は正座の状態から頭を下げて、土下座になっていた。
「そう。僕"達"!人喰いでーす。」
カイトがそう言うと、入口から4体、人型の化け物が。
体育館の2階からは6体、生徒達に飛びついた。
「うーーん。やっぱりいーい歓声じゃないか。耳鳴りがするほど大きい……ねえ?君のおかげだよ。ぽっちゃり君。」
カイトは生徒だった腕を、握手するように持ちながら、フライドチキンのようにがぶりと噛みちぎった。
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