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変異
だが、その思い付きは上手くは行かなかった。
「ん?」
口を開けながら人喰いはそれだけ言うと、
バクンと頭を食べてしまった。
その光景は、俺の目と耳がおかしかったのか、スローモーションで、全て無音だった。
「……………………ああ……、、、???」
確かに考えたらそうだ。
俺だって食事中に、
ダッシュで無害な可愛い子犬ちゃんがワンワン吠えながら走ってきても食事を止めようとはしない。
命をかけた作戦は、呆気なく失敗に終わった。
俺は敵の真ん中で囲まれるように膝を着いて崩れ落ちた。
「は……な……が死ん……だ?」
幼なじみで昔から知ってる彼女の記憶が、
小学生の頃から、次々とあふれてきた。
……そしてさっき、頭が無くなった光景まで思い出した。
「うぷっっっっっ!!おえええええええ!!」
「うわっ、なんだこいつ吐いたぞ。気色悪ぃ。俺は今食事中だぞ!!」
ハナを食ったギムと言うやつに言われた。
「おお、そーだ!」
ギムの手から離れ、
床にハナの力ない体が、ドチャッ!と落ちる。
「カイト!こいつを入れて10人にしよう!さっきのは食って悪かった。俺はこれを予想していたんだぞ!」
「はあぁー。そうかい、それは素敵なサプライズだね。君はいつも損害しか出さないと思ってたよ。」
「まーな!!」
「褒めてないけどね。」
ハナの体を呆然と眺めていたら、ソーマは猫みたいに、シャツの背中を掴まれた。
そして、両脇を掴まれて、カイトに向かって持ち上げられた。
下を向いてるソーマの目の端に涙が溜まって、口からはヨダレかゲロか分からない、何かがたれていた。
「おい……ソーマ……」
横から声がした。
高橋だった。
「た、高橋ぃ……」
高橋はボロボロで弱っていて、とても疲れているようだった。
「俺も見てた。怖くて隣にいるのに動けなかったよ。」
「……」
「なのにお前は……かっこいいな。かっこよかったよ。」
「……」
俺はただただ虚しかった。
「よーし!準備できた!始めるよ」
カイトがそう言って、僕らの前に立つ。
いつの間にか何故かカイトの指が全部ちぎれていた
「んーー。君たちの10人の中で生き残るのは多分ーー、3人くらいかな!まあでも生きたいって思えばきっと全員無事に人喰いになれるよー!頑張ってね!!」
10人は静まり返っていた。疲弊しているのだろう。そして逃げられないと、死を悟っているのだろう。
「なあ、ソーマ」
横から高橋の声がした。
「……」
「もし生き残ってたら、俺たちでこいつら皆殺しにするんだ。」
「……うん」
「ハナの敵をとるんだ。」
「……うん」
「……絶対に死ぬなよ」
「…………」
「それじゃあ!!いくよ!!よーいドーン!!」
カイトの声が急にして、指の先がびゅんと10本伸びて来た。
ズボッ!!
そして俺らの口の中に入って、喉で止まる。
「指先は切ってあるから、僕の血がどんどん君たちの中に入ってくるよー!フフ!フフフッ!」
「ウゴッッ!!!!カハッカハッ」
く、苦しい!!血がどんどん流れてきて溺れそうだった。
「……よし。もういいかなぁ??」
カイトは数秒自分の血を飲ませたあと、指の長さを元のサイズに戻した。
「ががが!!ぐあああああああ!!」
苦しい!!心臓がばくんばくんする、頭が……痛い!!!!
みんな悶えていた。
「さー。今回の収穫はどんなものかなぁ?」
カイトはそう言って、舞台の上に座り込んだ。
ぱんっ!
「っっ!!!」
突然俺の前の人の頭が破裂した。
「1人脱落ぅ〜」
ぽん!ぱん!ぽん!
「2ー3ー4ー」
「がああああああああ」
頭がちぎれそうだ!!割れる!割れる!!!
イカれてしまう!
俺は横の高橋を生きているか確認しながら悶え苦しんだ。
耐えろ!!耐えろっっっ!!
パンッッ
「5〜」
ポンッッ
「6〜?」
……痛みが頂点に達して、もはや痛く無くなってきた。なんか視界が赤くなってきた。
というか意識がもう……
でも、僕はまだ……死ねない……
「なぁーーなぁー」
カイトの声が小さく遅く感じてきた。
もう、ダメ…………かもしれない……
高橋。お前は生き残ってくれ……
ああ……くそ……
生きた……い……
パン!!!!!!
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