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ゴミ箱人間
俺は弱かった。
あの時力があれば人喰いを倒し、みんなを助けられることが出来ただろう。
弱いからあの時ハナを助けられなかったんだ。
でもさ……多分柔道やっててもあいつらには敵わなかっただろうな。
てことは絶対負けてた?
……負けるのが運命だなんて笑えてくるな。
「そんなことないよ。」
ん?
「生きて。ソーマ。」
ああ、
「起きて。」
この声はもしかして。
「起きて。」
もしかしてハナなのか?
「なあおい!起きなよ!!!こんなとこにいたらメーワクだよ?!!!」
「はっっ!!!!!」
ソーマはガバッと起き上がった。
「ハナは!?!?ハナは!?!?」
「何言ってるんだボーズ?頭いかれちまってるのか?」
「あの!俺の友達なんです!今ハナの声がして!!」
男性は、ソーマを見て、ため息をついて喋りだした。
「はあ……あんな?ボーズ」
はっ、とよく見るとヘルメットを被ったジョリジョリヒゲのおじさんだった。
「よーく周りを見ろ。ここにいるのはおじさんが二人……それとお前だけだ。それにここがどこか分かるか?ゴミ溜まりだ!!」
「この路地裏のきたねぇゴミ溜まりにそのハナちゃんってかわいい女の子がいるのか?」
「あ、、、え、、」
「いるんならおじさんが会ってみたいよ!まったく。」(笑えねえな!)
もっとよく見ると、おじさんの青緑の作業着には、ゴミ処理職員と書いてあった。
「おい、ボーズ、聞いてんのか?おい。おい!」
ソーマが、ぼーっとしていると、おじさんはもう1人のおじさんに話しかけた。
「だめだ。この歳で狂ってるか、お酒かお薬やってるらしい。」
そしてまたこっちを振り返った。
「なぁボーズ。おじさんたちはな?ここのゴミを持っていきたいだけなんだ。ここが君のベッドなのは分かるんだけどな?、ちょおぉぉーっとだけ、どいててくれないか。」
そう言うと、おじさんは僕をひょっと抱っこしてゴミ箱の中からどかし、
さっさと行ってしまった。
「……なんで俺はこんなとこにいるんだ??俺はここで一体何を……」
深い眠りから冷めると、一瞬自分の状況が理解できない時がある。
その時みたいだった。
「ハナが、どうしたっけ。今日高橋と朝喧嘩して、その時ハナもいて……」
ハナと高橋という言葉を呟いた瞬間に脳に記憶が一気によみがえった。
「く、あ、、うう、、オエっっっっ!」
とてつもないストレスが心にかかった気がした。
「……そうだ。俺はハナを……救えなかった。」
横を見ると、ゴミ袋がひとつ落ちていた。あの人たちが取り忘れていたんだろう。
とりあえずソーマはそこに座って心を落ち着かせた。
袋がぐしゃっと音を立てる。
「とりあえず、俺は生きてる。良かった。」
自分の手を見て、ポケットのスマホで自分の顔を見た。
確かに血を飲んだし、死にそうになったはずなんだけど、俺は人喰いになっていない。
(耳尖ってない。目が赤くない。歯がギザギザじゃない。よし!)
もしかしたら夢だったって可能性もある。
……いや、無いか。
それにしても、どうしてこんなとこにいるんだろう。
高橋は無事だろうか。
そんな事を考えていると、ギュルルルルーーとソーマの腹がなった。
「お腹すいたなぁーーー……」
何か食べたい。焼肉か、やっぱ焼き鳥でもいいな。
それか……人?何を考えてるんだ俺は。
路地裏から出ると、知ってる大通りだった。
すぐ隣で焼き鳥を売ってるお店があって、ソーマはフラフラとそこへ行った。
「おじさん……」
「おーう!!焼き鳥かーい良いよぉ!タレ塩どっちがいい!?!?」
「……タレを1本」
「まいどー!!はい!110円だね!!」
ソーマはポケットをガサガサと漁ると、100円しか出てこなかった。
「……まじか。」
ソーマはとても残念な顔になる。
「なあ、おじさん。10円まけてくないかな。」
「だーめだボウズ!!うちはそういうの!やってないよ!?一律110円!金がないならお家でママから貰ってきな!」
「ええ!そんなぁ!!今すぐに食べたいのに。」
ソーマはお腹がすきすぎて倒れそうだった。
3歩歩いただけでも倒れる自信があるのに……
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