ある腐男子の日常 2

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 お久しぶりです、皆さん。  え? 俺がだれかって? それはもちろん、この楽園の素晴らしさに日々感謝の儀を舞い踊る腐海の民こと腐男子Aです!☆  そんな俺の日常またもや紹介しちゃうぜ! ********** 「あ~、この話もめっちゃ泣けた! 黒騎士×王子が生まれ変わって再び結ばれるなんてごちそーさまです! この先生が書いた二次創作はいつも泣けるから好きなんだよな~。 さて今度は黒騎士×王子の童話パロでも読みますか~」 ふんふんと鼻歌を歌いながらスマホで別の作品を検索していると横から声がかけられた。 「おー、何か楽しそうだな」 「ん~何かよう? 話なら後にしてくんない。今俺は新しい世界へと旅立とうとしているのだから!」 「ほー、そうなのか。そりゃ悪かった。 ……何て言うと思ったか?」 「もー! だから話は後にしろって言って……る…」 至福の時間を邪魔された俺はその不届き者を見て文句を言ってやろうと顔を上げて横に目を向けた。が、そこにいたのは青筋を立てながら目が全く笑っていない状態で微笑むホストこと明日海 京一。 「あッあれ~。ホス…じゃなくて、明日海先生どうしたんですかー?」 「いやー、お前は今の時間を何だと思っているんだと思ってな?」 え? 今の時間? そりゃまだ休み時間じゃ……。 辺りを見回せば着席しているクラスメイト。机の上には教科書とノートと文房具がある。黒板を見ると数式が書かれており頭が痛くなってくる。 ナッ、ナゼだッ…! 俺は休み時間を満喫していたハズだ…! ――もしやタイムスリップッ…!? 「俺は未来に来たというのかッ!?」 「アホかっ! ボケぇぇええーー!!! 今はもうとっくに授業中だああーー!!」 「――!グフッ…ッ!」 明日海の怒声が響き渡り、脳天に衝撃を食らった。か、角はねえだろ…、泣いちゃうぞ…(震え声) 教科書で殴られた頭部を抑えながら、プルプル震えていると「スマホは没収しとくぞー」という声が聞こえた。 「ああーそんな! ひどいっ横暴だ! この鬼畜ホストッ」 「……そうか。授業が終わったら返してやろうと思ったが気が変わった。今日一日は没収な」 「ィ…イヤァアアー!! すみませんッウソですッゴメンなさいッー!」 どんどん遠ざかっていく俺のスマホ。 ああ…俺は一体どこで選択を間違えたと言うのだ……。 ********** キンコンーカンコンー。 「お前ホンットにバカだなー」 「うう…俺のスマホが…」 腐男子Bこと次男が呆れた様子で言うが今の俺には何も響かない。ただ涙を流して真っ白に燃え尽きていた。 授業が終わったら明日海はさっさと教室を出ていき、俺のスマホは返されなかった。 「別に一日くらい我慢しなよー兄さん。 放課後には返してくれるんでしょ?」 「ほ、放課後まで待つなんてッ、俺は耐えられないッ」 童話パロ見たかったのに……! 腐男子Cこと末っ子も俺を呆れた目で見つめる。 「とにかく、次は移動教室なんだから早く準備してよー」 「そうだぞ。ほら、教科書と文房具持って行こうぜ」 次男と末っ子の促す声にようやく俺はよろよろと立ち上がった。 「もー、時間ないんだからさっさと歩いて」 「おう…」 そうして三人で次の教室に向けて歩き出した。
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