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それは若者が初めてたどり着いた、本心だった。若者は流れる涙を拭いながら、語り続けた。
「東京では、俺は自分を殺さなくてはいけないと思っていた。自分を枠に押し込めて、窒息しそうだったんだ。このままでは、いつか本当に自分を殺してしまう……そんな気すらしていた」
部屋は静かだった。若者の語る声だけが響いている。
「いっしょに生きてくれて、ありがとう。俺はもう少し東京で頑張ってみる」
そう言い終わると、若者はうつむいていた顔を上げた。
部屋の中には彼以外、誰もいない。
十三人の自分自身は消えていた。
それをどこか納得した気持ちで、若者は息を吐いた。若者は一人だったが、孤独ではなかった。
若者は、立ち上がり、荷物をまとめると、立ち上がった。
「また来るよ。インドに。その時はまた会おう」
若者は一人で荷物を持ち、インドを後にした。
彼にはもう、迷う影はなかった。
(終わり)
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