手袋越しの熱

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結局この手袋を使うことはなかった。 子どもが母親に触れてもらうために拾ってきた手袋だなんて、世間の皆様から見たら忌々しいものなのだろう。 しかし美沙子は漂白してもまだ黄ばんだ手袋を捨てることは無かった。 愛したくて、触れたくて、触れられなくて 愛されたくて、触れられたくて 普通に溺れてもがいてようやく手に入れた薄汚れた白革の手袋が、私たちの愛なのだろうと思う。 理子は順調に育ってくれて明日は晴れ姿を見ることができる。 本当に自慢の娘だ。 「おい理子お前、これ拭いたティッシュも隠さんとバレてまうぞ、奥押し込まな」 仁志のコソコソとしているつもりの声が廊下に響いていた。アイスでもこぼしたのかしら。自慢の娘なんて時期尚早だったわまったく。 布団を引いて少しだけホコリだってしまった部屋に空気洗浄機をつけ、美沙子はあの子の雑な掃除を仕上げるため軽やかに階段を降りていった。
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