ひとまずエピローグ

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 一方で公園の中央ステージ。  待ち合わせによく使われるこの場所にはスクリーンが設置され、ハイビジョンの大画面が一日中、宣伝やニュースを流している。  突然大画面にサキと明日香のアップ。ふたりのバトルの上映を始めた。  公園の人々の目が画面に釘付け。  そして次の瞬間!  脂ぎった笑いと軽薄そのものの笑いを浮かべたふたりの男が登場。スマホでバトルを撮影する様子がアップとなった。  大画面の中。ふたりの男の見苦しい様子は延々と続いた。  公園中が、笑いと嘲笑に包まれる。 「おい。あのキモイ親父、ここにいるぞ」 「こいつもそうだ」 「あんたたちヘンタイだわ」 「恥を知りなさい」  大画面に登場している管理職とイケメンの社員は頭をかかえるばかり。 「ヒエーッ。何じゃ、これは」 「やっ、やめてくれ。誰がこんなことを……」  ふたりの叫びも空しく空に消え、スマホの無情な呼び出し音がけたたましく聞こえる。 「高橋さん。どういうことか説明してください。あなた、大事な取引先に表敬訪問してるはずじゃないですか?本当は盗撮に出かけてたんですか?ネットではあなたの映像が流れて大騒ぎです。帰ったらすぐに説明をしてもらいますよ」 「石黒くん。君はわが社をつぶす気か。今、君の顧客からクレームの電話が殺到している。直ちに無期限の謹慎処分だ。正式な処分はいずれ通知する。ヘンタイ社員とレッテルを張られては、新しい仕事もなかなか見つからないと思うが身から出た錆とあきらめたまえ」  ふたりがサキと明日香のバトルをスマホに撮影。喜びに包まれている様子は、何とネットにも拡散されていたのだ。  万事休す。  ふたりの男は一瞬にして髪の毛が真っ白になり、その場に立ち尽くしている。  子どもから女性まで、公園中の人々がふたりを指さし非難の声をあげていた。  明日香は振り返ってその様子を満足そうに見つめる。  視線の先にはサキと悠馬。  明日香のスマホが鳴る。  金色のスマホを手にする明日香。 「本田さん?天界のことはしばらくあなたに任せるから」  明日香はふたりのイチャイチャから目を離さない。 「私が帰るまで、天界の会長代理としてよろしくお願いします。いつ帰るか?私にもわかんない」  明日香がスマホを切る。 「サキさん。勝負はこれから。このまま、あなたの好き勝手にはさせられないの」  明日香がニヤッと笑う。 「何といっても私、悠ちゃんから言い出した婚約者(フィアンセ)なんだし……」  明日香は軽くカスタネットを鳴らしながら、楽しそうにサキと悠馬に向って歩き出していた。                                前編終                          【後編予告に続く】  
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